2018 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン組成変化が引き起こすがん化メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding |
Project/Area Number |
18H04904
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前原 一満 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (90726431)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クロマチン構造 / 癌 / エピジェネティクス / 生体生命情報学 / ハイパフォーマンス・コンピューティング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞のがん化の過程では、ゲノム上に存在する2-3万もの遺伝子から特定遺伝子の選択的な発現が失われ、無秩序な発現形式に陥る。そのため、遺伝子発現調整システムの破綻の本質的な理解のためには、ヒストンバリアントの選択、そしてヒストン修飾からクロマチン高次構造に至る情報を全ゲノムレベルで明らかにしていく必要がある。そこで本研究では、一細胞・少数細胞トランスクリプトーム・エピゲノム計測技術の開発、およびグラフ上の複雑な時間のフローをホッジ分解と呼ばれる数理的手法を応用して単純な要素に分解・解析する技法を開発し、ヒストンバリアントの取り込みによるクロマチン組成の変化がもたらす「クロマチン機能変化」の実体解明を目指す。本年度は、申請者の同定したマウス骨格筋幹細胞に発現するヒストンバリアントH3mm7が、遺伝子の欠損により骨格筋再生不全を引き起こすことを発見し、論文発表を行った。組織染色やトランスクリプトーム解析の結果、H3mm7の欠損は不均一な遺伝子発現変動を惹起しており、H3mm7が遺伝子発現量の「レート制御」(増加率の変化)の機能を担っていることが示唆された。同定した他のH3バリアント群についても研究を継続中である。さらに、計画していた一細胞・少数細胞エピゲノム計測技術(ChIL)についても論文発表を行うことができた。ホッジ分解を応用したシングルセル・プロファイル追跡法ソフトウェアを一般公開し、プレプリントサーバにて論文を公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたヒストンバリアントH3mm7の解析、および一細胞・少数細胞エピゲノム解析法(ChIL)の論文発表を行うことができた。またすでに、ホッジ分解を応用したシングルセル・プロファイル追跡法ソフトウェアは一般公開、およびプレプリントサーバにて論文公開しており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ホッジ分解によるシングルセル・プロファイル追跡法の論文公開を目指し、一細胞トランスクリプトーム・エピゲノムデータの取得計画を進める。本計画で開発した独自技術を組み合わせて用いることで、クロマチンのヒストン組成変化が引き起こす遺伝子発現調整機構の解明を目指す。
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Research Products
(11 results)