2018 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病リンパ腫におけるノンコーディングゲノム異常の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding |
Project/Area Number |
18H04907
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
片岡 圭亮 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90631383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 成人T細胞白血病リンパ腫 / ノンコーディングゲノム異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)において、これまでに十分な研究が行われていないノンコーディング領域の体細胞異常を網羅的に解明するために、十分な深度の全ゲノムシーケンスを用いた遺伝子解析を実施することを目的とする。現在までに、ATL100症例から得られた腫瘍・正常DNAを用いて全ゲノムシーケンスを実施し、次世代シーケンスデータ専用の解析パイプライン(Genomon 2)を用いて、遺伝子変異に加えて、コピー数変化や構造異常などの解析を行った。さらに、ノンコーディング領域の体細胞変異の検出、および、それらの意義付けを実施した。 具体的には、ノンコーディング領域全体において体細胞変異の集積部位を検索すると同時に、機能的部位(プロモーターおよびエンハンサー/サイレンサー/インスレーター領域、非翻訳領域、スプライシング制御関連領域、ノンコーディングRNA 発現領域)と考えられる領域に関しては、個別の解析を実施した。その結果、非翻訳領域やスプライシング制御関連領域を中心に、複数の新規遺伝子異常が見出された。さらに、プロモーターおよびエンハンサー領域においても、一部の転写因子結合部位に変異の集積が認められた。また、一部のゲノム領域にはKataegisと考えられる高度な遺伝子変異の集積が認められた。 これらの結果は、ATLにおいてノンコーディング領域にも反復する体細胞異常が存在し、ドライバーとして機能す可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定以上の症例の全ゲノム解析を実施し、既にノンコーディング領域における、いくつかの新規異常が同定されている。そのため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究により、100ペアのATL検体における全ゲノムシーケンスが得られ、ノンコーディング領域において新規の遺伝子異常を見出すことが出来た。本年度は前年度に引き続き、ノンコーディング領域の体細胞異常の解析を継続しつつ、見出された異常に関してATL細胞株を用いて機能解析を実施し、その腫瘍発症における役割を解明する。具体的には、細胞株において、その体細胞異常の強制発現、または、CRISPR/Cas9システムを用いたノックアウトを行い、細胞増殖や細胞周期、アポトーシスなどの細胞の表現型や、細胞シグナル・遺伝子発現などの分子機構に与える影響を評価する。これらを通して、新規の体細胞異常の生物学的な意義を解明することを試みる。
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