2018 Fiscal Year Annual Research Report
Origin of atmospheric bidecadal variability over the North Pacific and influence of 18.6 year tidal modulation
Publicly Offered Research
Project Area | Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem |
Project/Area Number |
18H04911
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
見延 庄士郎 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70219707)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 20年振動 / 北太平洋 / 潮汐混合 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,海洋が大気の20年振動に影響する可能性を調べるためのd4PDFの解析および,潮汐混合の20年変調が海洋に与える影響を調べるための溶存酸素データセットの拡張とそれを用いた解析を行った. d4PDFは,100アンサンブル・メンバーという非常に大きなメンバーを持つ,大気数値モデル実験であり,観測された表面水温等によって駆動される.d4PDFの解析で,本研究の文脈で最も注目したい現象は,冬季に北太平洋上のアリューシャン低気圧に生じる20年周期振動である.この20年周期振動には,海洋潮汐混合の18.6年周期変調が影響することが示唆されている.本研究の解析によって,d4PDFにおける冬季のアリューシャン低気圧の振動には,10年スケール変動が見られることが示された.しかし,その振動の時間スケールは,観測で見られる時間スケールよりも短く,このバイアスはほとんどのメンバーに見られる.この観測データとd4PDFとの違いは,大規模アンサンブルにおける仮定である,「観測はひとつアンサンブルである」ことが成り立っていないことを意味している.したがって,d4PDFの解析では,海洋が,ひいては潮汐18.6年周期変調がアリューシャン低気圧の20年変動に影響を与えているかどうかは判断できないことが明らかになった. 溶存酸素格子化データセットの深度方向の拡張は,World Ocean Database 2013のデータを用いて行った.その作成したデータセットを解析することにより,先行研究では知られていなかった複数地点について,潮汐混合変調の影響と考えて矛盾の無い18.6年程度の周期変動を見いだした.この結果は翌年度に予定する個々の海域に集中し,格子化データのみならず海洋観測の生データを用いて行う解析にとって,重要なステップである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたd4PDFの解析,溶存酸素格子化データセットの拡張とそれを用いて潮汐混合変調の影響を検出することを,順調に実施した.d4PDFの解析では残念ながら,アリューシャン低気圧の20年振動が海洋の影響を受けて生じていることの当否を明らかにすることは,データセットの限界によって出来ない事が示された.しかしd4PDFの解析は申請時に,ハイリスク・ハイリターン位置づけていたものであり,ポジティブな結果が得られなかったことは取るべきリスクであった.一方溶存酸素格子化データセットの解析は,予想外の海域も潮汐混合変調の影響を受けている可能性を示しており,当初予想以上の成果であると言える.これらの点から総合的に,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度は,溶存酸素データの解析をさらに格子化データのみによらず,生データをおも用いて行う予定である.なお,今年度得られた複数海域のうち,いずれの海域に集中して解析を行うかを,領域の研究者と議論を行って進める予定である.
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