2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the surface mixed layer based on the frontal Ekman theory
Publicly Offered Research
Project Area | Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem |
Project/Area Number |
18H04913
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東塚 知己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40376538)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エクマン流 / 海洋混合層 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋表層には、鉛直混合により密度がほぼ一様の混合層が存在するが、ここでは、大気と海洋の間で熱・淡水・運動量が交換されるため、大気海洋相互作用において、重要な役割を果たす。北太平洋の十年規模変動において、混合層厚の長期変動による海面熱フラックスへの感度の長期変動が、重要な役割を果たしていることが示されたが、この混合層厚の変動メカニズムの定量的理解はまだ得られていない。混合層厚は、海面冷却による対流、風成乱流等、様々な過程によって決定されるが、本研究では、風応力により駆動される流れ(エクマン流)に着目することにし、まず、水温前線域における有効エクマン流速、有効エクマン湧昇速度の定式化を行った。 次に、気象研究所で開発された海洋データ同化システムの4次元変分法を用いて作成されたFORA-WNP30の同化データとFORA-WNP30の作成に使用された大気再解析データJRA-55を用いて、海洋の非一様性を考慮した有効エクマン流速、及び、有効エクマン湧昇速度を北太平洋北西部において計算した。黒潮続流の流路の安定性は、十年規模で大きく変動することが知られていることから、まず、前線の影響が最も顕著に現れる安定期2002-03年の冬季に着目し、詳細な解析を進めた。その結果、黒潮続流に伴う水温前線の南北では、有効エクマン湧昇速度に、最大で25m/dayの差が存在することが明らかになり、有効エクマン湧昇が、混合層厚の南北勾配の緩和に一定の役割を果たす可能性が示された。混合層厚の南北勾配は、水温前線の強化に寄与していることから、有効エクマン湧昇は、水温前線を緩和する方向に働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した通り、今年度の研究で、海洋の非一様性を考慮して求めたエクマン・パンピング速度が、黒潮続流に伴う水温前線の強度決定において重要な役割を果たす混合層厚の南北勾配に影響を与えていることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で、海洋の非一様性を考慮して求めたエクマン・パンピング速度が、黒潮続流に伴う水温前線の強度決定において重要な役割を果たす混合層厚の南北勾配に影響を与えていることが明らかになった。そこで、次年度は、以下の2点について、研究を進めたいと考えている。 (1)北太平洋の十年規模気候変動に伴い、黒潮続流に伴う水温前線の強度も十年スケールで変動することが知られている。水平密度勾配の変動が、エクマン流やエクマン・パンピングの強度をどのように変動させ、混合層厚の変動に影響を与えているのかを定量的に明らかにする。 (2)混合層の底での鉛直流は、表層混合層への栄養塩供給においても重要な役割を果たしていることが期待されるが、海洋の非一様性を考慮したエクマン・パンピングによる栄養塩供給量を見積もり、実際の栄養塩分布との比較を行う。
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