2018 Fiscal Year Annual Research Report
黒潮周辺域における鉛直混合が植物プランクトン変動に与える影響評価
Publicly Offered Research
Project Area | Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem |
Project/Area Number |
18H04915
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石坂 丞二 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (40304969)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物プランクトン / 黒潮 / 混合 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒潮域での鉛直混合が植物プランクトンの変動に与える影響を調べるために、東シナ海での現場観測による植物プランクトンの群集構造の把握と、衛星海色データによる表層のクロロフィルaの変動の把握を行った。2018年7月に、長崎大学練習船長崎丸による長崎から奄美大島西側の黒潮フロント域でのクロロフィルaのサイズ分画の観測では、基本的にはクロロフィルaの増加は大型のプランクトンの増加に酔っていた。黒潮表層域では窒素固定を行う大型藍藻Trichodesmiumが多く、フロント渦による栄養塩供給によってクロロフィルaが増加したとは考えにくかった。静止衛星ひまわり8号によるクロロフィルaデータによると、長崎丸観測前にはフロント域にフロント渦または沿岸から流入したと考えらえる比較的高いクロロフィルa濃度の筋状の構造が存在したが、長崎丸観測時には比較的濃度は低かった。衛星しきさいのクロロフィルaデータによると、黒潮が浅瀬に入り島や海山にぶつかるトカラ海峡域では、特に夏のクロロフィルa濃度の低い時期に、屋久島や種子島の島回りおよび小さな島などの影響と考えられる、比較的クロロフィルa濃度の高いパッチが多く観測された。これらのパッチでは、海表面水温が周辺よりも約1度低く、鉛直混合によって亜表層から冷たい水が供給され、そこに存在する栄養塩で植物プランクトンが増加していることが示唆された。屋久島や種子島の島影のやや高いクロロフィルの水塊は島から離れないが、小さな島によると考えられる比較的小さなパッチは移動しており、また日によっては20個程度存在していた。さらに対馬暖流域で観測した中規模渦による春季大増殖の発生時期の違いをモデル的に解析し、高気圧性と低気圧性渦によってその発生メカニズムが異なることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長崎丸でのクロロフィルaのサイズ分画の観測、ひまわり8号での黒潮フロント域でのクロロフィルaの変動観測、衛星しきさいでのトカラ海峡のクロロフィルaの変動、さらに生態系モデルによる春季大増殖のメカニズムの解析などを行い、初年度として想定していた内容は実行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、植物プランクトン群集構造に関して、HPLC分析の結果で同時に取得した多波長励起蛍光光度計のデータを校正することで、愛媛大の吉江直樹博士とともに東シナ海からトカラ海峡にかけての群集構造の変動を把握する。また、衛星観測に関しては、さらにルソン海峡から黒潮続流域までの広い海域や過去のデータの解析を行うとともに、黒潮の鉛直混合によるクロロフィルaの変動に関して定量的評価を試みる予定である。
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