2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism maintaining the primary productivity by tide-induced diapycnal mixing in the western Subarctic North Pacific
Publicly Offered Research
Project Area | Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem |
Project/Area Number |
18H04922
|
Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
三角 和弘 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (10462889)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 鉄 / 海洋モデル / 栄養塩 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
西部北太平洋亜寒帯循環域は基礎生産が高く,生物活動によるpCO2の変動が大きい海域である.この海域の表層では栄養物質の一つである鉄の濃度が低く,鉄の不足が基礎生産を制限している.一方で,中層には鉄が高濃度で溶存していることが知られており,鉄を豊富に含む中層の水が,鉛直混合を介して表層に供給され,高い基礎生産を支えている可能性が考えられている. 北太平洋中層における溶存鉄の分布を数値モデルで再現するには粒子から鉄が脱着/分裂する長さスケールのパラメータを160 m程度にする必要があり,そのことは堆積物から供給された鉄が沈降速度が遅い(180-460 m/yr)粒子に吸脱着(凝集分裂)していることが示唆された.この結論は有機配位子の濃度や堆積物起源の鉄のフラックスを固定した条件で得られたものであり,その不確実性を考慮した感度実験を行い,実験を行った範囲で上記の結論を支持する結果をえることができた. また,西部北太平洋亜寒帯循環域の中層に分布する鉄と鉛直混合を介した基礎生産への影響を評価するため,亜熱帯・亜寒帯前線の位置を適切に再現し,中規模渦を解像することができる水平解像度1/12度のモデルを開発した.モデルが妥当に動作するかを確認するため,3/1の状態を初期条件とし,1ヶ月間の計算を行った.計算開始から1ヶ月すると中規模渦の影響を受け,硝酸塩濃度や鉄,植物プランクトンのバイオマス濃度に関しても複雑な空間分布が見られた.例えば,北海道の南南東の沖には周囲と比べて水温が高い渦が見られているが,その渦は硝酸塩濃度や鉄濃度が高く,植物プランクトンのバイオマス濃度が低いという特徴をもっていた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沈降速度が遅い粒子に吸脱着(凝集分裂)されながら鉄が水平輸送されていることや,それによって大量の鉄が縁辺海から北太平洋へ輸送されていることについて成果をとりまとめ,学術論文を執筆した.また,西部北太平洋亜寒帯循環域の中層に分布する鉄と鉛直混合を介した基礎生産への影響を評価するための水平解像度1/12度のモデルの開発を開始し,モデルが問題無く動作することを確認することができた.これらのことから研究はおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
計画研究班で検討されている潮汐混合のパラメタリゼーションを昨年度までに開発した高解像度モデルに導入し,潮汐混合の影響をON/OFFした実験結果の差分から,潮汐による鉛直混合が西部北太平洋亜寒帯循環域の高い基礎生産をささえる仕組みを明らかにしていく. 具体的には,前年度に中層に対して適用した鉄の収支解析を表層に対して適用し,西部北太平洋亜寒帯循環域への鉄供給プロセス(水平移流,水平渦輸送,鉛直移流など)の相対的な寄与を定量化する.また,鉄供給と基礎生産の季節変動の関係を明らかにしていく.
|
Research Products
(7 results)