2018 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動振動への介入法の開発と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Non-linear Neuro-oscillology: Towards Integrative Understanding of Human Nature |
Project/Area Number |
18H04932
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 広 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20435530)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グリア細胞 / アストロサイト / 光遺伝学 / てんかん / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の状態に応じて、神経細胞は周期的に発火し、多くの神経細胞がこの周期性に同期しながら発火する。生理的な神経発振は、例えば、記憶といった形で情報をコード化するのに役立つと考えられ、コントロールできないほどに発振が全般化すれば、てんかん発作につながる。本研究では、このような神経発振の意味を探るため、人為的に発振ステートを遷移させる実験的操作法を開発することを目的とした。具体的には、1)オプトジェネティクス(光遺伝学)による神経刺激を通して超長期可塑性を誘導する方法、2)脳内代謝回路の薬理学的操作によって神経伝達物質産生バランスを変化させる方法、3)グリア細胞活動の光操作によって脳内局所環境を変化させる方法を用いた。これまでの研究で、数日に渡る神経細胞刺激によって超長期可塑性を誘導し、過興奮しやすいてんかん脳や、てんかん刺激に対して抵抗性のある抗てんかん脳を作り出すことに成功した。この研究を通して明らかになったのは、定常的な脳内アデノシンという抑制性神経伝達物質の多寡が、神経発振現象を強力に支配しているという事実であった。そこで、当該年度の研究では、生来の脳細胞において、神経伝達物質を産生する際に働く補酵素を余剰に投与することで、神経伝達物質のバランスを変更し、神経発振現象をコントロールする方法で、脳内代謝回路に薬理学的に介入し、てんかん発作を封じ込める方法の開発に取り組んだ。実験の結果、既にキンドリングにより発展したてんかん脳に抗てんかん作用を発揮させることに成功した例もあったが、個体ごとのばらつきが大きいことが示された。そこで、ナイーブな動物を使って、興奮性の伝播そのものに対する薬理作用を調べるとともに、てんかんを発展させないための予防的措置としての作用があるかどうかを検討することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補酵素の大量投与による脳内伝達物質バランスの変化は、本研究では、マイクロダイアリシスでも検出された例もあったが、検出感度に疑問が生じた。そこで、急性脳スライス標本を用いて、定常GABA電流を計測するという方法で、神経細胞のGABA受容体をバイオセンサーとして用いて、補酵素投与の効果を調べることに取り組んでいる。このように、動物行動解析、質量分析、バイオアッセイと多方面からの効果の計測を実施している。また、本研究のもう一つの柱である、グリア・オプトジェネティクスによる脳内神経発振の制御についても、いくつかの進展があった。グリア光刺激を発端にしたてんかん発作誘導といった極端な変化から、扁桃体グリア刺激による不安様・抗不安様行動を誘導できる可能性も示唆されてきた。これらの研究については、次年度でさらに発展・深化させることを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
てんかん研究については、これまで開発してきた研究手法を利用すれば、今後も問題なく進展させることは可能である。一方、新たに、不安様行動・抗不安様行動を定量的に解析する手法を開発することが必要となった。そこで、オープンフィールドや高架式十字迷路等の行動バッテリー装置を新たに導入し、有線での光刺激・脳波記録とビデオ行動解析とを同時に行う方法を新たに開発している。これらを使って、不安を構成する脳領野間の共振現象を計測しながら、行動解析をすることを目指す。また、前年度で始めた薬理学的操作法についても、てんかんのみならず、不安様行動への影響を調べることもできるので、ふたつの研究計画は相互に影響し合いながら発展する可能性がある。
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[Journal Article] Optogenetic astrocyte activation evokes BOLD fMRI response with oxygen consumption without neuronal activity modulation.2018
Author(s)
Takata N, Sugiura Y, Yoshida K, Koizumi M, Hiroshi N, Honda K, Yano R, Komaki Y, Matsui K, Suematsu M, Mimura M, Okano H, Tanaka KF
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Journal Title
Glia
Volume: 66
Pages: 2013-2023
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Targeted expression of step-function opsins in transgenic rats for optogenetic studies.2018
Author(s)
Igarashi H, Ikeda K, Onimaru H, Kaneko R, Koizumi K, Beppu K, Nishizawa K, Takahashi Y, Kato F, Matsui K, Kobayashi K, Yanagawa Y, Muramatsu S, Ishizuka T, Yawo H
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 8
Pages: 5435
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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