2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of function of basal ganglia circuit using dopamine receptor and NMDA receptor mutant mice
Publicly Offered Research
Project Area | Non-linear Neuro-oscillology: Towards Integrative Understanding of Human Nature |
Project/Area Number |
18H04937
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
笹岡 俊邦 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50222005)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドーパミン受容体 / 大脳基底核回路 / NMDA受容体 / 運動制御 / 学習記憶 / パーキンソン病 / 報酬学習/忌避学習 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)パーキンソン病(PD)において、大脳基底核の異常なオシレーションが報告されているが、その発生機構の理解は十分でない。またPD の症状が、大脳基底核回路の直接路と間接路の2つの経路のバランスに由来することを説明するため、生理研の南部らは「ダイナミック活動説」を提唱している。代表者らは、D1ドーパミン受容体(D1R)発現をドキシサイクリン(Dox)投与で可逆的に抑制できるD1Rノックダウン(D1RKD)マウスを作製し、D1Rを欠損させると運動量が減少し、電気生理学的解析により、大脳基底核出力部において、正常では3相性(興奮-抑制-興奮)の神経活動が観察されるが、D1R欠損の場合は2相目の「抑制」の神経活動が消失することを発見し、D1R を介する情報伝達は大脳基底核の「直接路」を通る信号の伝達と、運動の発現に不可欠であり、この結果は「ダイナミック活動説」を支持することを示した。さらに、D1RKDマウスを用いて、D1R欠損の状態で、運動学習能力及び学習記憶能力をより解析した。 (2)D1R KDマウスと同様にDoxでD2Rが抑制されるD2RKDマウスを作製し、運動機能を解析した。 (3)視床下核のNMDA 受容体はMg2+ブロックが弱く、活性化し易い特徴がある。この特徴がオシレーション発振に重要であるかを検証する為、代表者らが作製した、Cre-loxP組換えを用いて一つのアミノ酸置換により異常活性化するNMDA 受容体操作マウスを活用し、大脳基底核回路の直接路、間接路においてCre-loxP組換えを導入し、NMDA 受容体の活性化による、運動機能・学習記憶機能に関して行動解析により評価した。 (4)また、D2Rの二つの分子種、D2R Long型(D2RL)とD2R Short型(D2RS)の機能を詳細に解析するため、Creドライバー依存的にD2RS欠損を惹起するマウスを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) D1Rノックダウン(D1RKD)マウスを用いて、Rotarod試験およびステップホイール試験による運動学習、受動的回避試験による学習記憶の成績を解析したところ、成熟期にD1RKDマウスをD1R欠損とすると、いずれの試験の成績も低下し、D1R発現を回復させると、いずれの試験の成績が回復したことから、成熟期の直接路の情報伝達が、運動学習および学習・記憶に重要である結果を得た。ステップホイールを用いた走行能力解析の結果、Dox投与によりD1Rを欠失した状況下のD1RKDマウスは、走行能力が顕著に低下していることを見出した。また、D1R KDマウスとArc-dVenusマウスとの複合マウスを用いて、Dox投与によるD1R欠損の状態の下で、電気刺激による忌避刺激を行った結果、野性型マウスでは広範囲にわたる大脳皮質の神経細胞の活性化が見られることに比べ、D1R欠損の状態のD1RKDマウスでは大きく抑制される結果を得た。 (2) Dox投与でD2Rが欠損するD2RKDマウスが作製できたので、Dox投与でD2Rが欠損した状態で運動量の計測を行ったところ、運動量が低下している結果を得た。現在、D2R遺伝子発現様式の解析を行っている。D2RKDマウスの電気生理学的解析に先立ち、比較のためにD2RKOマウスの神経活動の解析を行い、大脳基底核内情報伝達におけるD2Rの機能解明に迫る結果を得た。 (3)D2R発現細胞特異的に、Cre-loxP組換えによる変異導入により異常活性化するNMDA 受容体操作マウスを作製したところ、馴化が困難な表現型を示した。 (4)Creドライバー依存的にD2RS欠損を惹起するマウスの作製に関して、生殖系列遺伝するノックインマウスの樹立に成功し、現在ネオマイシン耐性遺伝子を除く交配をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) D1RKDマウスを用いて、走行運動に脳のどの部位のD1Rが必要かを調べるために、線条体に局所的にD1R阻害薬を投与する。D2Rノックダウンマウスについてもステップホイールで運動能力を測定する。記憶学習能力の検定のため、恐怖条件づけ、タッチパネル学習試験等の行動試験を行う。マウス全脳における統計的な比較解析を推進するために、個体ごとのイメージングデータを共通の参照脳に統合し、各解剖学的領域における活動変化を定量的に評価可能な解析基盤を整備する。また、神経活動の履歴を可視化するcFos-GFPマウスを用いて、D1RKDマウスとの複合マウスを作製し、学習記憶の試験時において活性化する神経細胞の解析を全脳レベルで行う。また、磁気共鳴イメージング(MRI)による画像解析を行う。 (2) D2RKDマウスでは、D2Rが発現している状態と発現していない状態における運動パフォーマンスと電気生理学的解析による神経活動の違いを、同一個体において比較することができる。これらの解析を行うことにより、大脳基底核内情報伝達と運動制御におけるD2Rの機能解明を目指す。 (3) D2R発現細胞特異的に、Cre-loxP組換えによる変異導入により異常活性化するNMDA 受容体操作マウスを用いて、自発運動活動と学習と記憶に関する行動テスト、全脳イメージング技術による画像解析、電気生理学による神経活動の解析を行う。 (4) Creドライバー依存的に、D2Rの分子種のD2RS欠損を惹起するマウスの作製に関して、生殖系列遺伝するノックインマウスとCreドライバーマウスとを交配させ、当該のD2RS遺伝子の欠損を引き起こした個体を作出して解析に供する。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Chemical Landscape for Tissue Clearing Based on Hydrophilic Reagent2018
Author(s)
Tainaka K, Murakami TC, Susaki EA, Shimizu C, Saito R, Takahashi K, Hayashi-Takagi A, Sekiya H, Arima Y, Nojima S, Ikemura M, Ushiku T, Shimizu Y, Murakami M, Tanaka KF, Iino M, Kasai H, Sasaoka T, Kobayashi K, Miyazono K, Morii E, Isa T, Fukayama M, Kakita A, Ueda HR.
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 24
Pages: 2196-2210
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] ドーパミン受容体及びNMDA受容体変異マウスを用いた大脳基底核回路の機 能解析2018
Author(s)
笹岡 俊邦, 佐藤 朝子, 知見 聡美, 大久保 直, 齊藤 奈英, 福田七穂, 内山 澄香, 作間 赳法, 阿部 光寿, 田中 稔, 山本 美丘, 三浦詩織, 阿部 学, 川村 名子, 小田 佳奈子, 佐藤 俊哉, 岡本浩嗣, 藤澤 信義, 田井中一貴, 崎村 建司, 南部 篤
Organizer
科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」 非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解「オシロロジー」 2018 年度第 1 回領域会議
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[Presentation] D1/D2ドーパミン受容体コンディショナル発現マウスによる運動制御機構の解明2018
Author(s)
笹岡 俊邦, 佐藤 朝子, 知見 聡美, 大久保 直, 阿部 学, 川村 名子, 齊藤 奈英, 小田 佳奈子, 作間 赳法, 内山 澄香, 阿部 光寿, 田中 稔, 山本 美丘, 神保 幸弘, 佐藤 俊哉, 藤澤 信義, 崎村 建司, 南部 篤
Organizer
第41回日本神経科学大会
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