2018 Fiscal Year Annual Research Report
物質流動を考慮した数理モデルの作成による発作発現機構の解明と治療法の提案
Publicly Offered Research
Project Area | Non-linear Neuro-oscillology: Towards Integrative Understanding of Human Nature |
Project/Area Number |
18H04940
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
上田 肇一 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (00378960)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | てんかん / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
てんかん発作に関する数理モデルの研究では,発作が発現する方程式のパラメーター領域の特定が中心的な課題である。しかし,本領域の課題の1つである,発作の原因解明とその治療法を開発するためには,そのパラメーター領域の特定に加え,何をきっかけとして脳活動状態が発作領域に遷移するのか?また,どのような治療を施せば発作領域から正常状態に戻せるのか?という,状態遷移機構を解明しなければならない。本研究では「物質流動の不安定化と発作現象の関係」に着目した数理モデルの作成を行う。特に,化学物質の流動不安定化と発作の関係,及び物質流動を正常化させる外部刺激法の開発を研究することにより,てんかん発作に至る状態遷移の数理機構を解明し,発作の予兆の特徴を明らかにする。さらに,患者への負担の少ない治療法を提案する。 近年,てんかんを発生させる原因として細胞外カリウムイオン濃度の振動現象が注目されている。これまでの研究では,グリアによる細胞外カリウムイオンの回収効果を考慮した数理モデルに対して数値実験を行い,時間周期的刺激印加によりカリウム濃度の振動を減衰させることが可能であることを示した。今年度は,細胞外カリウム濃度の振動を効果的に減衰させることができるパラメーターを特定するために,双安定領域が発生する典型的な分岐現象である,亜臨界型ホップ分岐とサドルノード分岐が同時に発生するパラメーター領域において数学解析を行った。その結果,サドルノード分岐点近傍においては,振幅の時間平均が0の刺激であってもカリウム濃度の振動を減衰可能であることを示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分岐点近傍における漸近解析を行うことによって,双安定系の分岐構造を持つ方程式において,提案手法が有効であることがわかった。このことにより,提案手法が他の現象に対しても有効であることを示唆する結果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞外カリウムイオンの流動を考慮したモデルを導出し,今年度提案した手法の有効性を確認する。また,細胞の非一様性がカリウム振動の発生に与える影響を数値シミュレーションによって解析する。
|
Research Products
(4 results)