2018 Fiscal Year Annual Research Report
重力・外圧変動に対して細胞・組織形態が持つ頑強性の検証
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
18H04967
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
道上 達男 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10282724)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 外圧 / アフリカツメガエル / 初期発生 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の個体・細胞・組織の恒常性は重力・外圧変動に大きな影響をうける。逆に外圧や重力に抵抗する術が獲得できれば、無重力・過重力空間での活動にも大きなメリットとなる。細胞は外力に対し細胞骨格の構築の変化で応答し、外力に対処する。しかし、このような変化に関わるタンパク質がどれなのか、また外圧に対して組織が構造の頑強性を保持する仕組みは必ずしもよく理解されていない。そこで研究では主にツメガエル胚を用い、外力付加の際にかかる細胞張力の測定や細胞形状変化を調べることで、外圧変動に対して組織が持つ頑強性を調べる。また、細胞骨格・細胞骨格結合タンパク質の導入により上記の頑強性がどの程度高められるかを調べる。 これまでの実績としては、(1)これまで研究室で用いていたアクチニンを用いた張力プローブに加え、別のアクチン結合タンパク質lima1(EPLIN)を用いた張力センサーを作製し、実際に張力計測が可能であることを示した。(2)ツメガエル胚に水圧を付加した場合、遠心機を用いて遠心力を付加した場合に体軸や目の形成に異常が生じた。またファロイジン染色を行った結果、外圧を付加した胚において、細胞膜近辺に見られるアクチンの局在が不均一になることを見出した。さらに、(3)ツメガエル胚にあらかじめアクチニンタンパク質を微量注入しておいた胚を胞胚期から原腸胚期にかけて遠心力を付与したところ、非注入胚に比べて異常を生じる胚の比率が減ることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.当研究室で用いているアクチニンを使ったFRETプローブを改善するため、別のアクチン結合タンパク質lima1(eplin)を用いた新規張力プローブを作製した。浸透圧変化によるFRET値変化などを調べプローブの有効性を確認した後、本プローブをツメガエル胚に導入したところ、先行研究と同様、神経外胚葉領域で表皮領域に比べて強い張力が生じているというデータを得た。さらに、細胞に外圧を与えた後では、与える前に比べて確かに張力が高いことを示すデータを得ることができた。このことは、先行研究で得られた結果を支持するとともに、lima1を使った新しいプローブの優位性を示すものである。 2.ツメガエル胚に様々な物理的な力を負荷した場合の影響を、表現型に加え細胞骨格の局在にも注目して検証した。まず、四細胞期のツメガエル胚に対して約200g重/cm2の水圧を約2日負荷したところ、体軸が弱く湾曲する初期幼生が観察された。そこで、さらに強い圧力を負荷するために、遠心機を用い、約5Gの遠心力を胞胚期に2時間負荷してその影響を調べた。その結果、体軸の湾曲に加え、浮腫などを形成する個体が認められた。また、遠心力負荷胚について、外胚葉細胞のアクチンの局在を調べたところ、非遠心負荷時では外胚葉細胞の膜に均一に見られるアクチン繊維が、遠心による外圧負荷をかけた胚ではその局在が不均一になることが明らかとなった。さらに、胞胚期に外圧負荷をかけると、植物極側に位置する割球のみ、非外圧負荷時に比べて大きいことが見出された。 3.次に、アクチン結合タンパク質であるアクチニンに対するmRNAを2細胞期の胚に注入し、胞胚期から原腸胚期にかけて2と同様約5Gの遠心力を2時間程度付加し、非注入胚との違いを検証した。その結果、アクチニン過剰発現胚では、遠心によって生じる体軸湾曲胚、及び頭部形成異常胚の出現頻度が下がる結果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、少なくとも正常な初期発生に物理的な力の負荷が表現型のみならず細胞骨格や関連タンパク質の局在にも影響を与えることが明らかとなった。2019年度においては、2018年度に出来なかった、細胞骨格系のタンパク質の細胞内での過剰発現による組織・細胞の頑強性の増加の有無を検討したい。具体的には、mRNAの注入により簡便に過剰発現ができるツメガエル胚の実験系を利用し、アクチンmRNA(あるいはActin-GFP mRNA)を微量注入した胚を加圧した際に、表現型がどの程度緩和するかを検証したい。さらには、アクチニンなどアクチン結合タンパク質についても、過剰発現による頑強性増加の有無を検討する予定である。 また、2018年度は微小管の局在観察が出来なかったので、いくつかの抗チューブリン抗体を試すことにより、遠心・加圧時の微小管の局在変化についても観察を行い、アクチン過剰発現時の表現型緩和の有無も同時に検討したい。また、加圧チャンバーの系も新たに行い、胚に空気圧を加えた際の表現型の変化、細胞骨格の局在の変化を観察したい。また、同様にアクチン過剰発現時にこれらの変化が緩和されるかどうかも検討する。
|
Research Products
(3 results)