2018 Fiscal Year Annual Research Report
Artificial models for cytoplasm with gravity-sensitive properties
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
18H04976
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
湊元 幹太 三重大学, 工学研究科, 准教授 (80362359)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミクロ相分離 / 水性二相系 / in vitro反応系 / 細胞骨格 / 人工細胞 / membraneless microcompartment / actin / liquid-liquid phase separation |
Outline of Annual Research Achievements |
分子と細胞のスケールをつなぐ細胞内の特徴的な構造として、近年液液相分離(LLPS)が注目されている。私たちはこの簡単なモデル系としてPEG (ポリエチレングリコール) /DEX(デキストラン)からなる水性二相分離系(ATPS)に着目し、細胞に基本的なin vitroの生化学プロセス(DNA複製、無細胞転写・翻訳、アクチン重合)などをこのミクロコンパートメントに封じ特に1Gでの細胞質の安定性議論のための1モデルとすることを目指している。 安定なATPS液滴の相図を検討しながら、いくつかのデモンストレーションを行ってきた。瀧口金吾講師(名古屋大)、吉川研一教授(同志社大)との共同研究実績の一部として、本課題開始後に採択されたものには(この成果は私たちが本研究課題に関する重要な研究として従前取り組んできたものであり現在さらに進展中である)「DNAおよび細胞骨格(アクチン)封入細胞サイズ水/水微小液滴」に関する研究がある(N. Nakatani et al. ChemBioChem 2018, 19(13), 1370)。細胞サイズの水/水微小液滴を生成し、DNAとアクチンを取込ませることに成功した。構造や重合状態がことなると、局在挙動に特徴的な違いが現れることを見出している。 さらに、同様の研究体制で、「水/水微小液滴への細胞封入」(H. Sakuta et al. Frontiers Chem 2019, 7, 44)に関する成果も発表した。PEG/DEX二相系で生成される水/水微小液滴に、細胞などの生物由来の構造体を封入、DEXを主成分とする微小液滴内に局在させた。さらに細胞は、液滴の表面、すなわちPEG/DEX界面、または界面から離れた液滴内部のいずれか(あるいは両方)に局在し、その局在性は、細胞の種類とPEG/DEX含有費によりスイッチされることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私たちは、これまで共同研究により行ってきた相分離・相転移に関する研究を踏まえ、近年、細胞質に存在することが明らかとなってきた、液液のミクロ相分離現象、すなわちLLPS構造(Liquid-Liquid Phase Separation(液液相分離:異種高分子溶液が非相溶となる)を眺めたとき、ミクロな相分離構造の安定性が細胞質の正常な機能に重要であり、そして重力はその安定性に大きく作用し得る因子と考え、本課題を着想した。 本年度、PEG/Dextran水性二相分離系(Aqueous two phase system、 ATPS)をモデルとして選んで、水/水液滴の特徴を実験的に捉えることができた。ここでは、特に、まず、種々の生体高分子、とくに重力感知に重要と考えられている細胞骨格のアクチン、などを封入したミクロ液滴の簡便形成などを、実験の対象とすることで、上述のような、この系に特徴的ないくつかの興味深い現象を明らかにすることができたと考えている。 現在、重力下でのミクロ相分離液滴の安定性評価を、効率的、効果的に実験する方法を試験している。今後はこれにより、重力下、液滴の安定性向上に寄与する条件検討に取り組み、細胞質様のモデル溶液と重力との関係について論じる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本年度は、基本的なin vitro生化学反応(DNA複製、無細胞転写・翻訳、アクチン重合)が重力により制御されるか、PEG/DEX ATPSによるミクロLLPS構造を用いたin vitroモデル実験により試験し、理論検討を行う、ことを目的とし、先ず、ミクロ相分離を示すモデル細胞質系の構築を行った。そして、水溶性高分子のPEG(ポリエチレングリコール)とデキストランの2相分離系により、種々の生体高分子、とくに重力感知に重要と考えられている細胞骨格のアクチン、などを封入したミクロ液滴の簡便形成などを可能とした。 今後はこれらを、重力感応細胞質モデルの観点から、つぎのような内容について実験を進めていく。まず、PEG/DEX ATPSミクロ相分離の相図作成と、撹拌による分離性を評価し、1G環境において、合一と分裂がつり合い、LLPS液滴が動的に安定する実験条件を求める。重力/無重力は、ミクロ相分離における衝突確率を上げる/下げるため、とくに、細胞質モデルにおける分散挙動、即ち合一(融合、成長)の促進/抑制に大きな影響を与えることから、前年度に引き続き、重要な実施目標である。 また、従来の作成方法に加えて、二相分離系の精密な相図作成を迅速に行える方法を確立し、適切なモデル設計に活かす。精密な相図に基づいたミクロ相分離生成により、ドメイン内外の比重差をほぼゼロ~極小に設定することが可能となるため、1Gでの長期安定な微小空間に閉じ込めた生体分子の反応や小器官などのふるまいを検証できる可能性があり、細胞質モデルとして有用である。上記を踏まえながら、重力下、安定に分散するように選んだ細胞質モデルへのin vitro反応系の取込を試みる。 以上の実験の設計・理論構築、技術、材料については、さらに研究協力者の方々と協力しながら行い、重力関連の実験に関しては領域内での連携に繋げる。
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