2018 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of space radiation to vascular endothelial cell thorough micronuclei formation
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
18H04978
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 純也 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (30301302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙放射線 / 血管内皮細胞 / 酸化ストレス / 微小核 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、将来的な宇宙での長期滞在において懸念される宇宙放射線の低線量率長期被ばくによる生体影響を、循環器系疾患を含め非がん影響を評価する実験系なりうる血管内皮細胞で検討することを目的とする。特に近年cGASを介した微小核形成が炎症応答・細胞老化を周辺の非被ばく細胞に誘導し、非がん影響の引き金となる可能性が考えられることから、このような微小核形成を通した細胞応答への役割について検討を行う。 本研究で使用する血管内皮細胞の培養条件樹立を最初に検討し、ヒト臍帯静脈血由来血管内皮細胞において、HuMedia-EG2(クラボウ社製)及び、コラーゲンIコートディッシュを用いることにより、約1ヶ月安定に増殖を維持する培養条件を確立することに成功した。 次に低線量率ガンマ線照射を行ったときの細胞応答をウェスタンブロット法で検討し、我々の以前のヒト正常繊維芽細胞における検討と同様に、p38MAPK, AMPK1, p53のリン酸化が観察され、血管内皮細胞で酸化ストレス応答が活性化することを明らかとした。また同様な照射でミトコンドリア特異的染色を用いて、照射に伴い出現する老化様細胞ではミトコンドリア形態の異常を示すことも明らかとした。 さらにこのような低線量率照射時にはγH2AX(DNA二本鎖切断損傷マーカー蛋白)が陽性の微小核が顕著に増加していた。また、ウェスタンブロット法でSTAT1のリン酸化が観察され、cGASの関与が示唆された。 これら平成30年度の検討結果から、血管内皮細胞では低線量率ガンマ線照射により、ミトコンドリア異常・酸化ストレス応答、細胞老化が誘導されるが、それら細胞応答にcGAS、微小核形成が関与する可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度研究では、一般的にヒト培養細胞株と異なり、培養が難しいヒト血管内皮細胞において、最初は使用培地の選択などで培養条件検討が難航したが、2ヶ月程度の検討で、安定に培養を維持し、本研究で使用する実験手法、ウェスタンブロット法、免疫蛍光染色法等の材料として問題なく使用できることが確認できた。さらに、ウェスタンブロット法では今までほとんど報告がない血管内皮細胞での低線量率ガンマ線照射の影響として、酸化ストレス応答が活性化することを明らかにするとともに、ミトコンドリア形態異常を誘発することも明らかにできた。また、研究計画として想定していた微小核形成が血管内皮細胞に低線量率ガンマ線照射により顕著に増加することも明らかとし、それがγH2AX陽性、つまりDNA損傷を含むことを示せた。これらの成果から総合的に判断すると、平成30年度当初に計画したとおりに、研究はおおむね順調に進行していると結論できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は当初の計画通り、おおむね順調に研究を遂行でき、低線量率放射線被ばくによる微小核形成が、cGASと相互作用して、血管内皮細胞における放射線影響の引き金・要因となる可能性を示したことから、次年度も申請時の計画通り、cGASと微小核形成との関係、その生体影響への役割、被ばく線量・線量率との関係、さらに分子メカニズムについて、以下の研究項目を通して検討する。 ①ミトコンドリア影響について、ミトコンドリア由来ROS量をMitoSoxで、形態変化をMitoTracker Red、ミトコンドリア膜の安定化をCytochrome c Oxidase Assay Kitで蛍光染色して、フローサイトメーター計測、蛍光顕微鏡観察で検討する。 ②微小核形成とcGASとの関係の解析を抗cGAS抗体と抗γH2AX抗体で二重に免疫蛍光染色し、蛍光顕微鏡で観察し、細胞質性γH2AXフォーカス(微小核)にcGASの染色がみられるかを検討し、線量(率)との関係も明らかにする。 ③細胞老化誘導について、γH2AX抗体あるいは抗cGAS抗体による免疫染色と、細胞老化マーカーであるβガラクトシダーゼ染色を同時に行い、細胞老化誘導が②で観察された微小核細胞で起こるのか、周辺細胞にも伝搬するのかを明らかにする。さらに、細胞老化マーカータンパクやDNA損傷マーカーをウェスタンブロット法で検討し、微小核形成と細胞老化誘導との関係を明らかとする。
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