2018 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙滞在の影響を受けにくい体質をつくる運動のための加速度センシング機構応用
Publicly Offered Research
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
18H04987
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
河野 史倫 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 准教授 (90346156)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 運動 / 加速度 / 前庭器官 |
Outline of Annual Research Achievements |
成熟ラットに35Hzの全身振動を1日10分間、週5日、8週間与え、その後の急性走運動に対する応答を調べた。運動によって一過性に発現増加することが知られている遺伝子群はヒラメ筋では通常と同等に発現増加したが、足底筋では増加量が有意に抑制された。この遺伝子群のうちPGC-1αとPDK4には足底筋において顕著な転写抑制が認められた。これら遺伝子座の転写開始点付近では、全身振動を行ったラットの足底筋でヒストンバリアントH3.3の取り込みが有意に高まっていることも明らかになった。このようなエピゲノム変化は慢性的な運動による変化と共通するものであり、運動効果の一部が加速度刺激に由来することを示唆する。 さらに、上記のような加速度を骨格筋がどのようにセンシングしているのか検討した。成熟ラットをVL群またはPBS群、DA群またはSham群に分けた(各n=6)。VL群には吸入麻酔下で両側中耳腔にアルサニル酸を注入し、PBS群には同様にPBSを注入した。処置翌日、VL群・PBS群ともに水泳テストを行い、VL処置が成功していることを確認した。DA群には全身麻酔下で脊髄第4および第5腰椎に由来する後根を左側で切除した。同一個体の右側をSham群とした。以上の処置から3週間後、半数のラットには35Hz・10分間の全身振動刺激を与え、2時間後に足底筋のサンプリングを実施した。残り半数のラットからも同じタイミングで筋サンプリングを実施した。これらの筋サンプルからRNA抽出し、急性の全身振動刺激に対して応答する遺伝子群をRNAシーケンス解析により同定した。DA処置したラットでは全身振動に対する遺伝子応答は起こったが、VL処置したラットでは遺伝子発現変化は認められなかった。この結果から、運動中の加速度刺激は前庭器官を介して骨格筋に入力していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画は、前庭器官または筋感覚神経のどちらが骨格筋の加速度センシングにおいて優位かを検討することであったため、計画は十分に達成できたと判断する。全身振動によって誘発される骨格筋のエピゲノム変化も明らかにできたことからも、研究全体が順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主たる目的は「加速度が運動効果獲得に必要な刺激のひとつである」ことを証明することである。そのために前庭破壊したラットを実際に運動させて、運動効果がどの程度獲得されるのか検討する必要があると判断した。2019年度はまずVLと運動を組み合わせた長期間の実験を実施する。以上の実験に加え、前庭電気刺激によって運動と類似したエピゲノム変化が起こるのかについても検討する。ヒストンバリアントH3.3の取り込みが運動と加速度刺激によって誘発される共通の影響であることが分かっているため、この指標を用いて運動効果獲得の程度を評価する。
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