2018 Fiscal Year Annual Research Report
「脳ならでは」の質感知覚方略:機械学習との画像特徴依存性の類似性と相違性
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
18H04996
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
永井 岳大 東京工業大学, 工学院, 准教授 (40549036)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 質感知覚 / 画像統計量 / 心理物理学 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、物体画像が短時間呈示された場合でも安定して知覚可能な「優位質感」を明らかにすること、および優位質感の知覚にヒトが用いる画像特徴と機械学習が用いる画像特徴を比較することであった。 2018年度は、研究代表者の過去の実験よりもサンプル数を増やし(35->131)、ヒトの質感知覚における刺激呈示時間の影響と低次画像特徴との関連性について改めて検討した。心理物理実験では33.3msから83.3 msだけ呈示される様々な素材の物体の写真を刺激として用いた。サーストンの一対比較法に基づき光沢感、透明感、温度感、重さ感の知覚量を計測し、その知覚精度に対する刺激呈示時間の影響を調べた。ここで、一対比較法を通常通り行うと刺激組み合わせ数の爆発により実験を終えることができないため,情報量の多い刺激対を優先的に用いる統計的手法も合わせて開発した。 その結果、光沢感と透明感で刺激呈示時間の影響が最も小さく、温度感、重さ感と続いた。さらに,実験刺激から23種類の空間周波数サブバンド輝度統計量と色度統計量を算出し、線形サポートベクターマシンの精度により質感知覚との関連性を調べたところ、その精度は、光沢感、透明感、温度感、重さ感の順に高かった。この順序は刺激呈示時間の影響の大小の順序と一致しており、質感知覚における刺激呈示時間の影響は低次画像特徴への依存性と関連する可能性が示された。 また、質感知覚に対する刺激呈示時間の影響が、刺激サンプル選定によりどの程度変化するか調べたところ、我々が以前用いていたサンプル数(35サンプル)の場合、どのサンプルを選定したかにより質感属性間の順位が大きく変動することが明らかになった。この結果から、心理物理実験から質感知覚特性を明らかにする上では、刺激サンプル数をできる限り多く、かつ広くとることが極めて重要であることが改めて実験的に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室でできる範囲で従来よりもサンプル数を増やして、2019年度に予定されているweb実験の基礎データを取得するとともにその有用性を実験的に示すことが2018年度の計画であったが、およそそのとおりに研究を進めることができた。また、当初の計画にはなかったが、光沢感などの特定の知覚と関連する画像特徴に関する知見も新たに得ることができた。一方で、2019年度に実施予定であるweb実験の準備については少し遅れているため、急いで準備を進め早急に実験体制を整える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に研究室内で行った実験の結果から,1. 心理物理実験に用いるサンプル数によって様々な質感属性の精度の計測結果や画像統計量との関連性が大きく変化すること,2. それにも関わらず,短時間呈示における質感知覚精度は画像中の画像統計量と大きな関連があること,が示唆された.2019年度は,サンプル数の問題を克服しつつ,短時間呈示における質感知覚特性について頑健な結論を導くことを目的として,web上で心理物 理実験の環境を構築し,多数のサンプル・被験者を対象とした実験を行う.2018年度に行う研究室内実験と比較し,刺激画像数を10倍以上の1000,被験者数を100人以上と大幅に増やした上で,a) 様々な質感知覚(光沢感,透明感,温度感,硬さ感など)に対する刺激呈示時間の影響の 計測,b) 刺激呈示時間の影響と画像統計量の関連性の解析,特に深層学習の各層で抽出される画像特徴を別個に取り扱い,複数の質感と多数 の画像特徴の関連性の包括的解析,を実施する.本実験を通常通りのパラダイムで実施すると試行数が多くなりすぎてしまうため,被験者の知覚情報を多く含む刺激対をオンライン最適化により適応的に求め優先的に使用することにより,限られた試行数からもなるべく精度良く質感知 覚量を推定する実験・解析手法を用いる.2018年度の実験との違いにも留意しながら解析を行う.例えば,2018年度の実験では少サンプル数に起因するサンプル依存的な画像統計量との相関があり結論の一般性が疑問視される可能性が懸念されるため,その結論の一般性が正しいか否かを判断することは極めて重要である.
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Research Products
(4 results)