2018 Fiscal Year Annual Research Report
神経操作で探るおいしい香りを認識する脳内メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
18H05005
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
村田 航志 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10631913)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経科学 / 食嗜好 / 嗅覚 / 嗅結節 |
Outline of Annual Research Achievements |
おいしい食事は豊かな生活を送る上で欠かせないものであるが、おいしいものを食べたときの満足感を脳はどのようにして作り出すのかはまだよくわかっていない。私達が食べ物を食べるときに感じる風味・フレーバーは味覚だけではなく嗅覚、すなわち後鼻腔経路によってもたらされる匂いの感覚によっても形成される。本研究では「おいしさ」を摂食によってもたらされる報酬感と定義し、摂食行動を正に強化する報酬感をもたらす嗅覚神経回路をマウスを用いた神経科学実験により同定する。 これまでの研究で、マウスが嗜好性を獲得しやすいフレーバー飼料を摂食した際に活性化する神経回路として、嗅結節という嗅覚入力を受ける腹側線条体領域が見出された。嗅結節内で特に強い活性化が見られた神経細胞群は、前内側部のドーパミン受容体D1を発現する細胞だった。嗅結節前内側部D1発現ニューロンの活動が動物に誘引的な行動をもたらすかどうかを検証するために、まず光遺伝学による神経操作実験を行った。ウイルスベクターを用いてD1ニューロン特異的にチャネルロドプシンを発現させ、リアルタイム場所嗜好性試験において嗅結節前内側部D1ニューロンを操作すると、マウスは光による神経刺激を受けた環境に対して嗜好性を獲得することがわかった。現在は薬理遺伝学を用いた神経操作実験によって、嗅結節前内側部D1ニューロンの活動がマウスの飼料に対する嗜好性に与える影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光遺伝学を用いた神経操作実験では、嗅結節前内側部のD1ニューロンに加えてドーパミン受容体D2を発現するニューロンの機能についても検討した。リアルタイム場所嗜好性試験において嗅結節前内側部D2ニューロンを操作すると、マウスは光による神経刺激を受けた環境に対して嫌悪性を獲得した。この結果は、食べ物の風味がもたらす嫌悪性の形成に、嗅結節前内側部D2ニューロンの活動が関わる可能性を示唆するものである。今後はD1ニューロンに加えて、D2ニューロンの機能を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
薬理遺伝学を用いた神経操作実験を継続し、嗅結節前内側部のD1ニューロンとD2ニューロンの食嗜好性における機能を検討する。活性化型の人工受容体hM3Dqと抑制型の人工受容体hM4Diのそれぞれを使い分けて、食嗜好性・嫌悪性獲得における両ニューロン群の関与を検証する。
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