2018 Fiscal Year Annual Research Report
質感知覚の獲得過程:知覚環境と感性情報
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
18H05014
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
金沢 創 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (80337691)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳児 / 質感 / 知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、色、明るさ、コントラストといった環境に存在する知覚的な属性が、個々人の知覚特性の違いに及ぼす影響を、異なる環境で成長する乳児の知覚を比較検討することで明らかにしようとするものである。特に安定し恒常的な知覚環境を構成する上で不可欠な過程を解明するべく、基礎的なレベルでのパターンの検出器の特性から、より自然な面、色、明るさといった高次な知覚、さらには視知覚にとどまらない多感覚なレベルでの質感の統合的な処理を、その獲得過程の側面から明らかにすることをその目的とした。 視覚を中心とする知覚発達過程は、生後1年の脳の発達により大きく変化し、大人が自然なものとして処理している過程が、全く存在しない段階から当然で意識できなくなる段階へと発達していく。この過程を検討していくには、言語教示を用いることができない乳児を対象とした、特別な研究方法が必要となる。本研究計画では、選好注視法、馴化法、など注視行動を用いた研究パラダイムをベースに、change detectionパラダイムや、RSVPなどの実験方法を乳児用に修正した実験手続きを用い、その知覚過程を検討してくことを目指した。 まず基礎的な知覚過程に関する研究成果としては、運動視の検出メカニズムの周辺抑制過程が発達的にどのように獲得されるのかについて、馴化法を用いて検討した。その結果、低月齢児においては、大人においては感度が悪くなる刺激条件において、逆に感度がよいとの結果が得られた。また、高次な知覚として、顔刺激を用いて、乳児における短時間での画像認知が、いわゆるRSVP(高速逐次視覚呈示)条件でも可能であることを示す検討も行った。こうした成果により、質感の発達が、3,4か月の低月齢から、7,8ヶ月の高月齢へと、段階的に発達していくことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚を中心とする知覚発達過程は、生後1年の脳の発達により大きく変化し、大人が自然なものとして処理している過程が、全く存在しない段階から当然で意識できなくなる段階へと発達していく。この過程を検討していくには、言語教示を用いることができない乳児を対象とした、特別な研究方法が必要となる。本研究計画では、選好注視法、馴化法、など注視行動を用いた研究パラダイムをベースに、change detectionパラダイムや、RSVPなどの実験方法を乳児用に修正した実験手続きを用いてきたが、研究がおおむね順調に進展している理由としては、これらの実験パラダイムが適切に選択されてきたからであるといえるだろう。 実験パラダイムの選択にあたっては、本実験に入る前の予備的な検討と、データを見ながらのミーティングが重要となる。もちろん、本実験に入る際には、データの収集にあたっては、実験パラダイムの策定によって構成された実験計画を事前に明確にし、予備実験の際のデータはすべて放棄したうえでの実験実施が求めらる。ただし、この予備的な検討なしには、すぐれた発見はあり得ない。本研究の進展における、入念な予備実験の重要性を強調しておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画では、質感の知覚過程を、その獲得から検討することを目的として。具体的には1歳以下の乳児を対象、注視行動を観察することで、その情報処理過程の発達を見ようとするアプローチである。特に、安定し恒常的な知覚環境を構成する上で不可欠な過程を解明するべく、基礎的なレベルでのパターンの検出器の特性から、より自然な面、色、明るさといった高次な知覚、されには視知覚にとどまらない多感覚なレベルでの質感の統合的な処理を、その獲得過程の側面から明らかにすることをその目的とした。 質感過程を解明していくには、果たしてどのような実験パラダイムにより色、形、陰影、などの視覚情報と、音や触覚などの視覚以外の情報が統合されているかを考えることも重要となる。また、質感を構成しているより基礎的な過程がどのような仕組みによっているのかを解明することも重要となる。そのためには、生理的な指標を計測することも重要となるだろう。刺激の呈示時間、刺激の呈示順序、刺激のサイズ等を調整し、果たしてどのような手続きが、乳児の注視行動を持続的に引き出すのかを検討する必要がある。今後は、この刺激呈示のパラダイムの調整を、より具体的に検討していきたい。 その際重要となるのは、成人の知覚からは容易には弁別できない刺激が、発達な未熟な乳児においては逆に簡単であるといった、いわゆる「知覚的狭窄化」と関連するような現象の発見である。今後は、この観点から、引き続きハイインパクトな研究をめざして推進していく。
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Research Products
(7 results)