2018 Fiscal Year Annual Research Report
炎症細胞社会に焦点を当てた閉経後NASH肝癌の発症機構の解明と予防戦略の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
18H05039
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小川 佳宏 九州大学, 医学研究院, 教授 (70291424)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | NASH肝癌 / 卵巣摘除 / マクロファージ / 一細胞遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
NASHの発症・病態進展における炎症細胞の病態生理的意義を明らかにするために、通常食(SD: standard diet)あるいは高カロリー食(WD: western diet)を20週間負荷した野生型マウスとMC4R欠損マウスの肝臓より非実質細胞を採取し、一細胞遺伝子発現解析を行った。tSNE法によるクラスター解析では、通常食飼育野生型マウス(WT/SD)、高カロリー食負荷野生型マウス(WT/WD)、通常食飼育MC4R欠損マウス(MC/SD)、高カロリー食負荷MC4R欠損マウス(MC/WD)より抽出した非実質細胞において遺伝子発現に大きな変化が認められた。特にマクロファージと考えられる細胞集団における遺伝子発現は、MC/WDとWT/WDの間あるいはMC/WDとMC/SDの間で明らかな差が認められ、NASHの発症・病態進展に伴ってマクロファージの質的・量的変化が示唆された。樹状細胞を含む他の炎症細胞分画においても遺伝子発現の変化が認められ、現在これらの細胞分画を詳細に検討している。 卵巣摘除後(閉経後に相当)の雌性MC4RKOマウスに高カロリー食負荷することにより、閉経後NASHマウスを作製した。このマウスでは卵巣摘除していない閉経前状態のマウスと比較して、肝臓における脂肪沈着と肝線維化がより高度であり、炎症の慢性化と線維化の起点となるhCLSの形成が有意に増加していた。マクロファージを含む炎症細胞浸潤がより高度であり、特に浸潤性マクロファージが増加していた。今後、閉経後NASHマウスより抽出した非実質細胞の一細胞遺伝子発現解析により、炎症細胞種の存在比率・活性化状態とともに線維芽細胞の活性化をもたらす細胞間相互作用を検討し、閉経後NASHの発症・病態進展における炎症細胞社会の変化と病態生理的意義を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NASHの発症・病態進展における炎症細胞社会の解析のため、雄性NASHモデルマウスのhCLSに注目し非実質細胞に対する包括的1細胞遺伝子発現解析を施行中である。一方、卵巣摘除後(閉経後に相当)の雌性MC4R欠損マウスを用いて、脂肪肝からNASHを経て肝細胞癌を発症する「閉経後NASH肝癌マウス」を確立し、同マウスにおいてマクロファージを中心とした炎症細胞浸潤に関する解析を進めている。これらの細胞集団における遺伝子発現解析が可能となっており、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
NASHの発症・病態進展における炎症細胞社会の解析のため、雄性NASHモデルマウスの非実質細胞に対する包括的一細胞遺伝子発現解析を施行中であり、hCLS形成に関与する炎症細胞種の質的・量的な変化と細胞間相互作用の分子機構を検討する。一方、閉経後NASHマウスより抽出した非実質細胞に対しても一細胞遺伝子発現解析を行い、炎症細胞種の存在比率・活性化状態とともに線維芽細胞の活性化をもたらす細胞間相互作用を検討し、閉経後NASHの発症・病態進展における炎症細胞社会の変化と病態生理的意義を検討する予定である。
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