2018 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanisms of microglial activation and neuropsychiatric disorders
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
18H05042
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
久保田 義顕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (50348687)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミクログリア / 自閉症 / 炎症 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉性障害や統合失調症は、ひとたび罹患すると患者のクオリティー・オブ・ライフは一生涯影響を受けるため、根本的な治療法や予防法を確立することが社会的に求められている。本研究は、血管の異常を期待して作成した新規分子Leucine rich repeat containg 33(Lrrc33)のノックアウトマウスにおいて、偶然見出した意外な表現型を足掛かりとして遂行されている。Lrrc33ノックアウトマウスでは、血管に異常は全く無い一方、感染や異物が無いにもかかわらずミクログリアが恒常的に活性化され、発生期より脳において持続的な炎症反応がおこり、神経の器質的な傷害とともに、重篤な自閉症様症状を呈する。この知見を突破口とし、ミクログリアが、精神神経疾患の発症・病態の進行にどのように関与しているかを、マウスモデル、ヒトゲノムサンプルの有機的な連携を通じて、炎症を介する自閉症の発症機構の一端を明らかにすべく遂行されている。本年度の成果としては、Lrrc33は自然免疫を司るToll様受容体(TLR)、特にウイルスdsRNAの受容体であるTLR3とのヘテロダイマー形成により、TLRシグナルの負の制御因子として働くことを示唆する所見を、構造生物学的解析、免疫沈降法から得た。また、ヒト自閉スペクトラム症サンプルのゲノム解析によって得られたLrrc33遺伝子の一塩基変異に関し、ゲノム編集技術を駆使し、それらに相当する変異マウス(T488A,R688C)を作成し、その表現型の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、精神神経疾患の発症におけるキープレーヤーとして特に注目を集めているのが、中枢神経系における免疫細胞であるミクログリアである。本来外敵排除のために静止状態で待機しているミクログリアが、何らかの原因で制御不能となった場合、神経に対して危害を及ぼし、精神神経症状が出現すると考えられている。つまり、自閉症などの精神神経障害の少なくとも一部は、大脳における『炎症細胞社会のコントロール不全』と考えることが出来る。これまでの臨床研究において、自閉症の一部は炎症が関与することは、ほぼ明らかとなっているが、機能的側面からのアプローチは、ヒトを対象とした研究では難しい。これらを背景に本研究は、遺伝子改変マウスの解析、ヒトゲノム解析を同時進行させ、ヒトとマウスをサイエンティフィックに頻繁に往来し、Lrrc33遺伝子の自閉症発症における意義の全容解明を通じて、炎症細胞社会の破綻と自閉症発症の関連性の全容を解き明かすというものである。本研究の当初の計画に沿って、Lrrc33は自然免疫を司るTLR3とのヘテロダイマー形成により、TLRシグナルの負の制御因子として働くことを示唆する所見を、構造生物学的解析、免疫沈降法から得た点、また、ヒト自閉スペクトラム症サンプルのゲノム解析によって得られたLrrc33遺伝子の一塩基変異に関し、ゲノム編集技術を駆使し、それらに相当する変異マウス(T488A,R688C)を作成した点に関し、当初の予定通りに研究計画は進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で解析されているLrrc33はTLR3の内因性のnegative regulatorとして作用することが構造生物学的解析、免疫沈降法による研究成果から示唆されているが、本年度は、その下流で働く分子経路を、Lrrc33欠損マウスの単離ミクログリアサンプルから、多面的に、分子生物学的、生化学的に検証し、その実態を明らかにする。またLrrc33欠損マウスの自閉症様の症状に関し、さらに行動解析のテスト(open field test、novel object testなど)を追加し、この表現型の解釈にさらなる幅を持たせる。理化学研究所吉川武男博士との共同研究である、ヒト自閉スペクトラム症サンプルのゲノム解析によって得られたLrrc33遺伝子の一塩基変異に関し、ゲノム編集技術を駆使して作成された一塩基変異ノックインマウス(T488A,R688C)の表現型解析を通じて、それらの変異の機能的な意義の検証をすすめる。また、本研究の柱となるのは、共焦点顕微鏡による蛍光免疫組織学的解析であり、紛れもなく必須の実験であるが、昨年度まで使用していた既存の共焦点顕微鏡装置が老朽化、レーザー発振装置、ディテクターの経年劣化、さらには、メーカーのサポートの中止により、装置を新たに整備する必要が生じている。これに対する対応策として、2019年度は共焦点顕微鏡レーザー発振装置(オリンパス製FV3000)の購入を予定している。
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Research Products
(3 results)