2018 Fiscal Year Annual Research Report
南極大気中の硫酸安定同位体組成の季節変動を再現する大気化学輸送モデルの構築
Publicly Offered Research
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
18H05050
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
服部 祥平 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (70700152)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 南極 / エアロゾル / 三酸素同位体 / 同位体異常 / 硫黄同位体 / 地球寒冷化 |
Outline of Annual Research Achievements |
南極の氷床コアには過去数十万年分の気温変動、二酸化炭素などの温室効果ガスの他、放射収支に負の影響を及ぼす大気中微粒子(エアロゾル)といった環境指標が保存されている。東南極の氷床コアに含まれる硫酸は、主に南大洋における植物プランクトンが放出するジメチルスルフィド(DMS)を起源とし、これが大気中で酸化されることで生成する。硫酸エアロゾルは、温暖化を抑制する気候フィードバックに関与する物質として注目を集めている。しかし、実際に気候変動が起こった際に、どのようなフィードバック機構により変化によって硫酸エアロゾル動態が変化しているのかには不明点が多い。 硫酸には酸素(O)と硫黄(S)の複数の安定同位体組成を有し、その安定同位体組成は気候変動に対してその起源や生成過程がどのように変化・応答したかを反映する有効なプロキシの候補である。しかし、深層コアの分析だけではそのデータの解釈は難しく、プロキシ変動のメカニズムに関する理解が不可欠である。そこで本研究では、南極大気エアロゾル中硫酸の多種同位体組成の季節変動を観測し、それをモデル化することを目的としている。また、南極大気だけでなく雪・アイスコアなどの分析も行い、その指標有用性の評価や、古環境情報の抽出を行う。 初年度では、硫酸の三酸素同位体組成(Δ17O値)に基づく大気酸化剤の変動を説明するモデルをGEOS-Chem全球大気化学輸送モデルを用いて構築した他、すでに南極沿岸・内陸の大気エアロゾル中の季節変動を比較した。 また、南極大陸ドームCの100 mのアイスコアに含まれる硫酸の硫黄同位体異常から、噴煙が成層圏まで到達する成層圏噴火と、対流圏に留まっていた対流圏噴火を区別する手法を開発し、過去2600年の大規模火山噴火の記録を復元した。この成果をNature Comm誌に発表し、プレスリリースを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた大気化学輸送モデルに安定同位体情報を導入することが完了した他、比較対象である沿岸・内陸での硫酸エアロゾル試料の多種同位体分析が完了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
硫酸の多種同位体組成を大気・雪・アイスコア試料に適用をする他、構築したモデルと観測値の比較から、今まで見過ごされてきた大気化学プロセスを浮き彫りにする。
|
Research Products
(7 results)