2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of ocean circulation and estimation of the pathway of the Circumpolar Deep Water in the Southern Ocean seasonal sea ice zone by using satellite radar altimeter
Publicly Offered Research
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
18H05051
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
溝端 浩平 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (80586058)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 南極海 / 海面力学高度 / 海氷域 / 周極深層水 / 東南極 |
Outline of Annual Research Achievements |
CryoSat-2レーダー高度計観測値から、南極海の海面力学高度(ADT)データセットを作成した。水平解像度はEASE2グリッド(50km解像度)および0.2度グリッドの2種を採用した。ウェッデル循環・ロス循環の強度と風の回転成分を比較したところ、それぞれ相関係数0.60, 0.64となり、大気循環場で説明できることが示された。当該研究が対象とする東南極では、現場観測で示されてきた時計回り渦(200kmスケール)はEASE2グリッドでは確認できないが、0.2度グリッドデータで捉えることが可能となった。ただし、0.2度グリッド解像度にしたため、各グリッドでのサンプル数が減少し、品質フラグでスクリーニングしても取り除ききれない異常値(氷縁域や高度計の観測モード変更領域に見られる)によるバイアスの寄与が、EASE2グリッドデータよりも大きくなった。そこで、0.2度グリッドデータを主成分分析で分解し、平均場とEOF第1から第10モードで再構築した。その結果、東南極では暖かい周極深層水を極向きに輸送する時計回り渦が点在していることが明らかになった。またビンセネス湾沖およびトッテン氷河沖の渦は時系列解析から、恒常的に存在することがわかった。ADTの第1モードの空間分布は、ビンセネス湾から流出する高密度陸棚水が変質した南極底層水の経路に対応する分布を示唆しており、ビンセネス湾沖の渦分布の説明変数として風応力だけではなく、南極底層水がもう一つの候補として挙げられた。 2019年1月には海鷹丸航海で、ビンセネス湾沖およびトッテン氷河沖においてCTD・XCTD・ADCP観測を実施し、さらにADTデータから示されたビンセネス湾沖の渦の東側(63.5S, 110E)に周極深層水の極向き輸送・水温および塩分鉛直プロファイルを観測するための係留系を投入した。本係留系は今年度の海鷹丸航海で回収予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、衛星海面高度計観測値から海氷域・開放水面域双方の海面力学高度データセットの構築を行った。ジオイド高については当初はEGM2008を使用していたが、GOCEデータが採用されているGOCO05cに変更し、現場の渦分布を捉える現実的な海面力学高度データセットに改良することにも成功した。また当初の想定では、周極深層水の極向き輸送を担う渦の強度は、ウェッデル循環やロス循環と同様に、風応力で説明できると考え解析を進めていたところ、少なくとも渦分布の平均場には海底地形によって輸送経路が規定される南極底層水が寄与していることが示唆され、大気側だけでなく、海洋側にも要因があることが想定された。 現場観測では、ビンセネス湾沖の海面力学高度や周極深層水の空間分布を把握するためのCTD観測を問題なく実施することができ、なおかつビンセネス湾沖からトッテン氷河沖までの経度方向のCTD/XCTD観測を実施することで、周極深層水が極向きに輸送される場所を捉えることができた。係留系については、予算の都合上、海底圧力センサーはマウントできなかった。一方で、自動昇降式CTD(電磁流速計付き)を搭載し、周極深層水の挙動を重点的に把握するための観測を現在実施中である。現在前倒しで、周極深層水の挙動を把握するために、構築した海面力学高度データを用いた粒子追跡実験を実施中である。 衛星データ解析の進捗、現場観測による周極深層水分布の把握、海底圧力計なしではあるが係留系投入することができたことなどを総合して、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、東南極で新たに見出した、周極深層水の極向き輸送に寄与する時計周り渦に関する論文を執筆中で、5月には投稿予定である。また今回作成した海面力学高度データセット(EASE2グリッド、50km解像度)を用いて、全南極海における周極流(ACC)フロントや陸棚斜面に近いフロントの挙動も解析できるようになったため、周極深層水を伴うフロントの南下時期・場所の特定を行い、これに関しても発表予定である。 データ解析の方針としては、さらに海面応力場と渦の強度との関係の詳細を調査する。また粒子追跡実験を月平均データに適用し、周極深層水がいつどこでどれだけ到達するかを明らかにする。周極深層水の空間分布データには、まずは海鷹丸観測で得られたデータ(1月)を使用する。上記のフロントの挙動により、周極深層水が南下、もしくは北上している場合は、適宜、周極深層水の初期場をフロントのいちにあわせて変更し、実験を行う。 今年度(令和2年1月)には海鷹丸観測により、係留系の回収を実施する。直ちにデータ解析を行い、特に周極深層水の挙動と海面力学高度分布との関係についての発表を行う。海底圧力計をマウントできなかったため、海洋の順圧応答・傾圧応答に関しては自動昇降式観測機及び各層の水温・塩分・流速を用いて力学モードと流速の順圧成分・傾圧成分を解析することで対応する。 なお、当初予定ではICESatを用いて過去の海面力学高度を算出することにしていたが、レーダー高度計に比べて不確定要素が多く、現在はEnvisatのレーダー高度計データ(Geophysical Data Record)を用いて解析を進めている。
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