2018 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類の警戒音声は生得的な脅威対象と連合するか?警戒音声言語進化仮説の検証
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
18H05070
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (30335062)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 警戒音声 / 言語進化 / 霊長類 / ヘビ / 自閉症モデル動物 / 第三者視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト乳児は16 ヶ月齢までに、成人が恐れている声を聞いたときに(ゾウやキリンよりも)ヘビの画像を長く見る。すなわち生得的に脅威の音声とヘビの視覚情報が連合していることが示唆される。 ある種の霊長類はヘビを指示する警戒音声を有するが、そのような音声と視覚的定位は学習が必要とされてきた。学習せずに警戒音声(聴覚情報)がヘビの視覚刺激と連合していることを示した結果は、限定的にしか示されていない。 本研究では、1)ヘビを見たことのないマーモセットが同種他個体の警戒音声とヘビの映像を潜在的に連合させているかを検討する。それが確かめられれば、「霊長類の音声言語の起源の1つは特定の脅威を信号することである」可能性が示唆される。2)音声発達の偏りと社会的コミュニケーションに障害がみられる自閉症モデル・マーモセットにおいても、警戒音声とヘビに潜在的な連合があるかを検討する。また、3)社会性の異なる種で第三者のやり取りの認識が異なるか、すなわち言語進化に関連するとされる視点取得能力が社会性と関連するかを調べる。 これらによって、進化・障害と視点取得の観点から豊富な音声レパートリーを有するマーモセットの音声表象が生得的に特定の対象と連合させているかを調べ、警戒音声が言語を進化させたとの仮説にアプローチする。 H30年度は、1)マーモセットは、他個体の警戒音声を聞いたときにヘビの映像を注視する時間が長くなるか?と、2)種によって第三者のやり取りが互恵的か非互恵的かを区別できるか、すなわち言語進化に関連するとされる視点取得能力が社会性と関連するかを調べた。具体的には、ヘビ注視のための実験装置を作成した。また、ニホンザルとマーモセットを対象に第三者の互恵的・非互恵的認識実験を実施し、マーモセットはこれらを区別するが、ニホンザルではできないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種の社会性と視点取得能力が関連するかを検討する実験は完了し、すでに論文は受理された。その意味では順調に進展している。 いっぽうで、警戒音声とヘビ映像の潜在的な連合を調べる研究は、研究担当者が異動したこともあり、少し進捗が遅い。実験装置を完成させたが、マーモセットの警戒音声を録音するところまで進まなかった。ただし、映像と音声がそろえば実験が開始できる。 これらを総合的に勘案すると、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験装置が完成したので、実験個体を順次、装置に馴致させていく。それと平行して、マーモセットの警戒音声を録音する。そのために、おもちゃのヘビを購入し、ヘビに対する警戒音声を発するか調べる。音声を記録できれば、警戒音声を聞いているときに(コンタクトコールに比べて)、ヘビ(キリン・ゾウ)のビデオ映像を長く見るかを調べる。
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Research Products
(6 results)