2018 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of contact calls in dolphins tells us the origin of human name
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
18H05071
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森阪 匡通 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00422923)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イルカ / コンタクトコール / 名前 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちヒトは名前を持つ。所属を表す方法は文化などによって異なるが、個人を示す「名」に関しては、ほぼユニバーサルであると考えられ、ヒトの「名」は起源が古いことが予想される。本研究では、ヒトの「名」はもともと多くの動物が発するコンタクトコールを起源とするものであるとの仮説を立て、ヒトと同様に個体の「名」を示す種から、明瞭な個体差を持たないコンタクトコールをもつ種まで多様なハクジラ類におけるコンタクトコールの進化を調べることにより、前記した仮説の妥当性を検討するものである。 ハクジラ類のコンタクトコールの進化過程を調べるにあたり、本年度にシロイルカ(ベルーガ; Delphinapterus leucas)の新たなコンタクトコールに関する知見を得た。これまでの名古屋港水族館のシロイルカを対象とした私たちのグループの研究により、シロイルカは、ホイッスルは音声交換に用いず、パルス音のうちギー音(当時はPS1コールと呼称)を用いて音声交換を行うこと、そしてこの音のパルスパターンに個体差が存在することを明らかにしてきた。 今年度、他の飼育個体群(しまね海洋館アクアス)のシロイルカの鳴音研究により、これまでのギー音の定義には当てはまらないコンタクトコールが見られたため、研究者間でばらばらであったコンタクトコールの記載を統合し、新たな定義づけを行い、さらに名称もギー音(creaking call)に統一を図った(Mishima et al. 2019)。また、メスでは個体間差がはっきりとしているが、オスでは鳴音の共有が見られることも明らかにした。この共有が、ハンドウイルカにおける真似に当たるのか、それともタイプを共有しているのかについては、これからの研究が必要である。いずれにせよ、このような鳴音使用の性差が見られたが、これは彼らの生態の性差を反映している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画としては、1)スナメリにコンタクトコールが存在するか?2)ベルーガの鳴音に指示的信号の機能が存在するか?3)ミナミハンドウイルカの鳴音に指示的信号の機能が存在するか?4)ハンドウイルカの母親は子供に名づけを行うか。について研究を進めることとしていた。 1)については、新生仔の鳴音を既に取得しており、また、水族館での研究を進める内諾も取り付けている。2)については、ベルーガの鳴音で世界的に混乱していたコンタクトコールを一つの鳴音(ギー音)としてまとめ、また、性差があることも明らかにした論文を掲載した。これにより、ベルーガの鳴音に指示的信号の機能があるかどうかに迫ることができる基盤が整ったといえる。3)についてはデータを取得しており、サンプル数が増えている。4)については既にデータを取得済みであるが、残念ながら水族館での研究協力者が水族館を辞められ、一般企業に就職されたため、解析に関しては現在止まっている状況である。 このように、研究は一部少し遅れが認められるものの、一方で一部は予想以上に進んでいることから、全体的には順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)スナメリにコンタクトコールが存在するか?2)ベルーガの鳴音に指示的信号の機能が存在するか?3)ミナミハンドウイルカの鳴音に指示的信号の機能が存在するか?4)ハンドウイルカの母親は子供に名づけを行うか。について、本年度に関して以下のように進めていく考えである。 1)スナメリに関しては修士学生1名が水族館で鳴音コミュニケーションの研究を行う。すでに研究を進めている。2)ベルーガの鳴音に関しても、修士学生1名が水族館で鳴音コミュニケーションの研究を行う。この学生は昨年度もベルーガの鳴音研究に関わっており、現在この研究の論文執筆中である(申請者も共同研究者である)。3)ミナミハンドウイルカの鳴音に関しては、申請者自身が6月~7月にデータを取得し、解析を行う。4)ハンドウイルカの鳴音に関しても、データ解析を進めていく。
一方、新たな試みとして、カマイルカの鳴音の研究も進めていきたい。カマイルカの鳴音にもコンタクトコールの機能がありそうであるが、その使用形態は上記した種をはじめとした鯨類のコンタクトコールの中で、かなり特異である可能性がある。これを追加することにより、研究の厚みが増えることを期待している。なおこの研究は、三島由夏助教(東京海洋大)との共同研究として行う。
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Research Products
(4 results)