2018 Fiscal Year Annual Research Report
発話意図を表す機能語の獲得と進化の構成的理解
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
18H05076
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡 夏樹 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (20362585)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 対話行為 / 機能語 / ヒューマン-ロボット・インタラクション / 足場がけ / 語意獲得 / 言語進化 / 構成的理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
相手の発話の対話行為(質問、依頼、申し出、陳述のような発語内行為(Austin, 1962)のレベルでの発話意図)を推測できることは、意図共有の第一歩である。機能語(冠詞、前置詞、助動詞、助詞等)は、主に統語的関係を表すが、対話行為の識別に有用である。日本語では文末の終助詞や助動詞が話者の心的態度を表す。子どもの獲得時期も早い(綿巻, 2016)。 本研究では、人とロボットのインタラクション実験を通して、言語発達における「発話意図を表す機能語の獲得」の仕組みを明らかにすることを目指し、研究を進めている。2018年度の主要な成果は以下の2つである。 1) 足場がけは、子どもや初心者が支援なしには達成できないような問題解決、タスクの実行、ゴールの達成を可能にするプロセスである(Wood, Bruner, & Ross, 1976)。 足場がけは子どもの学習を促進すると考えられているが、我々は、この足場がけが人とロボットのインタラクションにおいても生起することを確認した。 2) 足場がけを検知して状態空間の再構成と記憶方針の変更を行う学習モデルを構築し、インタラクション実験を実施した。足場がけは実験参加者ごとに様々であった。学習モデル設計時に想定した足場がけに対しては素早く学習が進んだが、想定していなかった足場がけに対しては学習に時間がかかることが明らかになった。このモデルは対話相手の意図を明示的には持たせない方針で設計したが、現在、対話意図の明示的な表象を利用した後付け推論のモデルをこれに付加することを試みている。また、これと並行して、発話意図を表す機能語の進化を深層強化学習を用いて計算機シミュレーションすることを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の主要な成果として、1) 足場がけが人とロボットのインタラクションにおいても生起することを確認した。つづいて、2) 足場がけを検知して状態空間の再構成と記憶方針の変更を行う学習モデルを構築し、インタラクション実験により学習の進行の様子を調べた。以上の1),2)それぞれの成果で、査読付きの論文が採択された。 また、以上のモデルは対話相手の意図を明示的には持たせない方針で設計したが、対話意図の明示的な表象を利用した後付け推論のモデルをこれに付加する試みにも着手しており、次年度の発展が期待できる。 さらに、以上と並行して、発話意図を表す機能語の進化を深層強化学習を用いて計算機シミュレーションする研究にも着手しており、次年度の成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次の3つの研究を並行して進める。 1)人とロボットのインタラクション実験を通して、言語発達における「発話意図を表す機能語の獲得」の仕組みを構成的に明らかにする研究では、開発済みの対話相手の意図を明示的には持たせないモデルに、対話意図の明示的な表象を利用した後付け推論のモデルを付加し、より総合的なモデルへと発展させる。 2)「発話意図を表す機能語の獲得」の仕組みを明らかにする研究では、「発話意図を表す機能語の進化実験に適したタスク」を、計算機シミュレーション実験、および、人を対象とした実験室実験のそれぞれに対して考案し、深層強化学習を用いた言語進化シミュレーションを行う。 3)以上の成果を統合し、思い出を共有し共感し合えるエージェントの開発を通してコミュニケーションの未来を考える。
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