2018 Fiscal Year Annual Research Report
Anatomical and Physical Conditions Necessary for Syllable Articulation Including Friction Consonants Viewed from Language Evolution
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
18H05077
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野崎 一徳 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (40379110)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 摩擦音 / 構音 / 言語進化 / 空力音 / チンパンジー / 顎骨形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
言語進化実験等から得られる音声パターンの物理的(生体力学的)妥当性の検証を踏まえた上で、聴覚閾値と舌運動機能という前適応同士の創発によって、無声摩擦子音/s/や/sh/を含む音節が成立し得るのかを、物理実験と数値シミュレーションによって明らかにすることを目的としている。この目的を達成するため、次のの3つの基礎技術を応用した。1)断面積の異なる5つの矩形管のみで実際の/s/や/sh/と同様の音を生み出すモデル(単純形状モデル)、2)スーパーコンピュータ「京」を用いた圧縮性数値流体シミュレーションによる流れと音の関係性の可視化、3)舌内部の各筋にかかる収縮力の逆推定可能なゼツ運動モデル、である。 これら我々独自の研究開発成果を利用することによって、言語進化のメカニズムの解明に取り組んだ。具体的には、古代から現代まで変化がなかった、空気の流れから生じる音の物理に基づいて、以下の流れで研究を実施した。A)古代人の声道を化石や系統的に類似した霊長類等から推測し、三次元再構築、B)空力音響学的物理実験により発話を再現、C)空力音響数値シミュレーションにより発話の物理的メカニズムを解析。 現在までのところ、単純形状モデルのうち、舌挙上運動をモデル化し、呼気流量と舌上下運動を最適化することにより、実際の被験者の摩擦音と同様の構音を再現し、さらに、ジェットが生まれてから消退するまでの間が一定に定まることを明らかにした。 また、解剖学的なベースラインとして数名の日本人(現代人)の摩擦子音構音時の声道形状をMRIを用いて計測し、それぞれの声道形状に関して流れ場と音場を調べた。さらに、チンパンジーの頭蓋顎顔面データを用いて、統計的な形状の導出に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度から開始する予定であった、チンパンジーや人の実形状を用いた研究を、初年度から開始することが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
ホモ・サピエンスとチンパンーの間の古代人形状を統計学的に求め、それについて物理実験と空力音響数値シミュレーションにより発話の物理的メカニズムを解析する。 幾何学的手法に従い、チンパンジーの下顎骨座標集団の仮想座標を求め、それに関する統計解析を行う。仮想形状間のパラメータ算出し、形状変形の幾何学的補間を行う。さらにチンパンジーとホモ・サピエンスとの統計的な相違やヒト属共通の特徴抽出を行う。特徴点をチンパンジーとホモ・サピエンスの下顎骨のそれぞれに対応させて配置させ、幾何学的補間によってパラメータ化仮想形状下で空間補間を行う。標準形状間での形状補間を実現し、チンパンジーとホモ・サピエンスの数個体同士を特徴点を用いて筋突起、関節突起等を固定点として形状補間を行う。 こうした補間によって、統計的な観点から、構音という空力音響学的現象を再現し評価することにより、言語の発生に不可欠な最小単位である音素の発声可能性について推定する。 さらに、上下顎における骨格的な特徴の変化が音素の発声可能性に与える影響を、物理的な観点と結びつけて考証する。
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