2018 Fiscal Year Annual Research Report
教示学習を通した記号化から言語化への経時的認知発達に基づく構成論的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
18H05079
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久保田 直行 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (30298799)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 認知発達ロボティクス / 言語化 / コミュニケーション / 教示学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,[研究項目1]として、人型ロボットの認知発達システムを開発するために、視線検出、注視対象物体検出、頭部・指さし・ハンドジェスチャ認識、物体操作計測を行う知覚システムの開発を行い、これらの知覚情報を用いた予測に基づく知覚システムの開発を行った。また、認知発達システムの機能構成について検討した。 次に、[研究項目2]として、上述の認知発達システムを用いた言語学習に関する研究を教示学習システムの定式化を行った。問題の簡単化のために、複数の異なる形状と色の積み木やボールなどの物体操作を含む教示を対象に、言語を未学習の状態から経時的に、自己・他者・対象物の三項関係の相互作用に基づく学習として定式化を行った。具体的には、教示過程を大きく(1)教示者(人間)による対象行為の再現(以下、教示フェーズ)と(2)学習者(人型ロボット)による試行(以下、試行フェーズ)と、この2つのフェーズ間の切り替え(以下、ターンテイキングフェーズ)の3つのフェーズに分けて、これらのフェーズに必要な知覚機能と行為機能を明確にした。さらに、教示学習を行うためのセンサ内蔵型実験用具と実験テーブルを開発し、予備実験を通して、実験テーブルを用いたマルチモーダルな計測情報からロボットが行動学習を行えることを示した。 さらに、他の研究組織と提案手法を用いた学際的な研究を推進するために、情報通信技術、ロボット技術を臨床発達心理学、応用行動分析学の観点から活用する発達支援ロボティクスに関する議論を行い、実際に、現場で複数の異なるロボットパートナーを用いた実験を行うことにより、発達支援におけるロボットの意味や役割について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、(1)要素技術の開発、(2)言語に基づく認知発達に関する構成論的な理解、(3)他の研究機関との得られた知見に基づく発達支援に関する具体的な連携の検討が具体的な課題であった。まず、要素技術の開発については、当初の目的通り、視線検出、注視対象物体検出、頭部・指さし・ハンドジェスチャ認識、物体操作計測に関する計測ができるようになった。また、各種予備実験から簡単な物体のハンドリングに関する計測ができるようになった。次に、関連性理論における認知環境、現象学における過去把持と未来予持に関する考えから、予測に基づく知覚システムに関する予測に基づく知覚システムのフレームワークを提案した。また、言語に基づく認知発達に関する構成論的な理解を行うために、知覚情報・行為情報の離散化・記号化・分節化に関する検討を行った。離散化・記号化・分節化を行うためには、境界を生成・拡大・縮小するための方法が必要であり、これらの議論を多角的な観点から行った。最後に、提案手法を用いた学際的な研究を推進するために、学内外の他の研究組織と発達支援ロボティクスに関する議論を行い、実際に、現場で複数の異なるロボットパートナーを用いた実験を行うことにより、有効性に関する検討を行った。特に、「引き込み」を実現するためのカップリングの構成論的解明、「相互模倣」に基づくコミュニケーションの重要性に関する議論を行った。 以上の進捗状況より、本研究が当初の目的・計画に沿って遂行できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度の研究に引き続き、以下の研究項目を実施する。 [研究項目2]言語学習に関する研究として、 (2-3)教示フェーズにおける学習者の行為、(2-4)ターンテイキングフェーズのコミュニケーション、(2-5)試行フェーズにおける学習者の知覚と行為、(2-6)教示学習を介した言語学習・模倣学習を行う予定である。 [研究項目3]階層性学習に関する研究として、(3-1)構成素間相関学習システムの構築、(3-2)構成素間相関学習システムにおける境界の強化、(3-3)構成素間相関学習システムからの階層性の抽出、(3-4)インタラクティブ階層性学習の分析行うことにより、言語学習に必要な機能を構成論的に解明することにより、本研究課題を遂行する。 具体的な課題として、ロボットと子供がふれ合いながら認知発達に関する支援を行うために、単純化されたタスクを開発し、言語を介して、どのように学習していくのかを観察する。次に、実際の現場で子どもとロボットとの相互作用の分析を行うために、ロボットの「間」の取り方(リズム、相槌)、ロボットのターンテイキング(同期・非同期行為)に関する検討を行う。さらに、子供とロボットとの円滑なコミュニケーションを実現するために、行動の変動性(ゆらぎ)から引き込みを実現するためのリズムの生成方法について検討する。最後に、これらの検討結果から、「引き込み」を実現するためのカップリングの構成論的解明、「相互模倣」に基づくコミュニケーションの方法論を確立する。
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Research Products
(5 results)