2018 Fiscal Year Annual Research Report
低次元化に基づく免疫受容体配列ダイバーシティ解析手法の改良と応用展開
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis and regulation of cellular diversity |
Project/Area Number |
18H05096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 徹也 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90513359)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レパトア / NGS / T細胞受容体 / 多様性 / 低次元化 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる摂動条件下で取得された胸腺T細胞受容体のシーケンスデーターを中心に、そのダイバーシティ状態の変化の解析を進めた。利用するデータに計測機器由来の疑似相関や異なる時期に取得されたデータごとにシーケンス深度や計測された受容体の多様性に質的な違いが見られたため、その原因の同定や検証などを進めた。具体的には同じサンプルからの再シーケンスを行うとともに、FastQデータからT細胞受容体情報を抽出するために用いているソフトウェアを複数比較することで問題の同定を行った。その結果、一部のデータでおそらく受容体RNAからcDNAへの変換に起因すると思われる不具合などを見出している。
受容体ダイバーシティの時間的な変化を捉えるための方法としてPCAおよびtSNEなどの手法を検討し、免疫細胞への一過的な摂動に応答したダイバーシティの変化を低次元空間で表現できることを確認した。また異なるサンプルや異なる分化状態のT細胞受容体多様性のダイナミクスがこの低次元空間で弁別できることも確認した。同時に、シーケンスデータ内で多数観測された特徴的なT細胞受容体配列の由来をデータベースなどを元に調査したところ、それが特定の分化状態のT細胞に該当することを見出した。
免疫ダイバーシティの変容を表現するモデル化として、力学系モデルに基づくモデル化と機械学習的な方法を用いたモデル化などの検討も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
利用するシーケンスデータに見られる性質の差が、生物学的なものなのか、それとも計測や処理に起因するものなのかの判断・判別に予想以上に時間を有した。 しかしながら、免疫ダイバーシティの変容を表現する数理モデルなどについては当初以上の進展があった。 また、シーケンスデータの解析からこれまでかなり少ない割合で存在すると考えられていた特殊な分化状態のT細胞が、その成熟過程で思ったよりも存在する可能性が発見できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はT細胞受容体の解析から見いだされた特殊な分化状態のT細胞(X細胞)が実際に既知の細胞と一致するのかなどを、分化マーカーなどを用いて確認してゆくことを考えている。 また免疫ダイバーシティの変容をシーケンスと力学モデルなどを融合して解析するための基盤の開発を更にすすめる。
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