2018 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ視覚中枢をモデルとした組織の発生と腫瘍形成機構の理解
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis and regulation of cellular diversity |
Project/Area Number |
18H05099
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
八杉 徹雄 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (90508110)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 視覚中枢 / 発生・分化 / 腫瘍形成 / 数理モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
組織の発生、恒常性維持において、未分化細胞の増殖と分化は様々なシグナル伝達経路の相互作用によって厳密に制御され、種々の分化細胞が産生される。この細胞社会ダイバーシティーの破綻は種々の疾患の発症と密接に結びつく。例えば、未分化細胞の過剰増殖は腫瘍化を引き起こし、早期の分化や細胞死は変性疾患を生じる。これまで、組織発生及び腫瘍形成モデルにおいて、未分化細胞の挙動を制御する個々のシグナル経路の動作機構の理解が進んできたが、生物学的アプローチのみでは細胞間相互作用を含む複雑なシグナル間相互作用を正確に記述することは困難であり、全体像の理解には程遠い。 本研究では、未分化細胞の増殖と分化が時空間的に制御された中で進行するショウジョウバエの視覚中枢をモデルとし、実験生物学的手法と数理生物学的手法を組み合わせることで、複数シグナル経路の相互作用の全体像を明らかにし、組織の発生と腫瘍形成機構の包括的な理解を目指している。 2018年度は視覚中枢の発生を定量的に理解するために、ライブイメージングによる視覚中枢の発生の可視化を試みた。また、視覚中枢の発生と腫瘍形成を制御するHippoシグナルと、Hippoシグナルとの遺伝学的相互作用が示唆されたインスリンシグナルについて、その動作機構について解析を行った。さらに、ライブイメージングの結果得られる未分化細胞の増殖をシミュレーションで再現できるように、視覚中枢の発生を模倣する数理モデルの改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚中枢の発生を定量的に理解するためにライブイメージングによる視覚中枢の発生の可視化を行った。基本的な手技は確立できたものの、より長時間の鮮明な画像得るために、改良されたプロトコルを得たので、引き続き条件検討を進める。 Hippoシグナルの働きについて、Hippoシグナルとインスリンシグナルの相互作用を中心に解析を進めた。今後、視覚中枢の発生を制御するEGF、Notch、JAK/STATとの相互作用についても詳細に調べる。 既存の数理モデルは離散モデルを用いていたため、細胞分裂などの取り扱いが困難であった。この問題を解決するために、Notchシグナルの作用を連続的に示すことができるようモデルの再構築を行い、現象を再現する改変モデルを得た。これにより、細胞分裂のファクターを数式の中に取り入れ、より生体内で起こる現象を定量的に説明することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ライブイメージングにより、野生型及びHippo変異体における細胞分化と腫瘍形成を定量的に理解する。また、EGF、Notch、JAK/STAT、インスリンなど視覚中枢の発生を制御する複数シグナル間相互作用を明らかにし、数理モデルへ応用するパラメータを推定する。さらに、連続モデルを用いて数値計算とシミュレーションを行い、野生型及びHippo変異体の腫瘍形成モデルを再現する適正パラメータを探索する。数理モデルから予測される増殖・分化パターンを再現する実験系を構築し、予測の検証を行う。 これらの研究を通して、複数シグナル経路の相互作用の全体像を明らかにし、組織の発生と腫瘍形成機構の包括的な理解を目指す。
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