2018 Fiscal Year Annual Research Report
The study of memory consolidation through the parallel circuit in Drosophila mushroom body
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
18H05129
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平野 恭敬 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (40580121)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 並列回路 / ショウジョウバエ / 長期記憶 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の脳はすべての知覚情報を記憶することはなく、様々な情報を統合した結果、特定の情報のみを記憶すると考えられる。記憶の長期固定化においては遺伝子発現誘導が重要であることがわかっているが、脳回路がどのようにして長期固定化すべき情報を解析し、遺伝子発現誘導を介して長期記憶を形成しているか、ほとんど知られていない。記憶のモデル動物として用いられるショウジョウバエでは、繰り返し学習が長期記憶の固定化に重要である。私はショウジョウバエの脳神経活動のマッピングを行うことで、記憶中枢神経における並列局所回路が繰り返し学習中に変化し、その結果、遺伝子発現を介した記憶の固定化を誘導する可能性を見出した。本研究では、1:並列局所回路による遺伝子発現を介した長期記憶固定化の神経基盤を明らかし、続いて遺伝子発現を介した記憶固定化の基礎となる、2:並列局所回路の変化のメカニズムを明らかにすることを目標とする。 ショウジョウバエは匂いと電気刺激を同時に与えると、匂い嫌悪記憶を形成する。この課題を15分間隔で5回以上行う繰り返し学習を施行すると、遺伝子発現依存的な長期記憶が形成される。ハエの匂い記憶中枢は約4500神経で構成されるキノコ体と呼ばれる神経構造体である。キノコ体神経は遺伝学的に7種類に分類され、匂い情報は7種類のキノコ体神経(αβs、γmなど)に並列に伝達されることがわかった。昨年度は、神経活動に伴いリン酸化されるMAPキナーゼERK(pERK)を神経活動マーカーとして用い、繰り返し学習で活動を変化させる神経を探索した。その結果、繰り返し学習のみで活動を変化させる神経を発見した。この神経群が繰り返し学習依存的に遺伝子発現を誘導し、長期記憶を形成させる神経と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の仮説どおり、MAPKのリン酸化を指標とすることで、繰り返し学習のみで活動を変化させる神経を発見した。本年度に同定した神経の、遺伝子発現依存的な長期記憶の誘導における役割を明らかにすれば、計画通りに研究が進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に同定した神経の活動を人工的に操作し、神経活動の変化と長期記憶の因果関係を明らかにする。赤色光の照射により神経を興奮させるCsChrimson、および赤色光照射により神経を抑制するNpHRを活用し、さらに因果関係を裏打ちし、論文報告を目指す。本研究により、並列局所回路による遺伝子発現を介した長期記憶固定化の神経基盤が明らかになるだろう。
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