2018 Fiscal Year Annual Research Report
認知プロセス依存的に柔軟に経路変化する皮質層・領域間情報動態の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
18H05140
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
竹田 真己 高知工科大学, 総合研究所, 特任教授 (00418659)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気生理学 / 長期記憶 / 脳神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶の情報処理メカニズムに関して、皮質層レベルの情報処理から記憶関連領域間の情報処理まで複数の空間スケールにおける情報処理に注目して研究を進め、論文発表を行った。 我々は、目にしたものをもとに関連したものを思い出すことができる。こうした心のはたらきを支える脳内神経回路として、大脳の側頭葉が重要な役割を果たしていると考えられてきたが、側頭葉ニューロン群が「ものを見た」知覚情報から記憶を想起する際にどのように協調して働くのか、その動作原理は明らかではなかった。そこで、記憶課題を学習したサルを用いて、「ものを見て、ものを思い出す」際の側頭葉神経回路のはたらきについて調べた。サルに対になった視覚図形を学習させ、ある図形を見たときに対の図形を思い出すように訓練し、課題遂行中に側頭葉の36野とTE野とよばれる二領域の神経活動を同時計測した。その結果、想起する図形そのものを表象している36野ニューロンの神経活動は、図形を見たときにはTE野の浅層とよばれる皮質層と協調的に働く一方、対となる図形を思い出す際にはTE野の深層とよばれる別の皮質層と協調的に働くことが明らかとなった。さらにこうした脳領域間伝達信号は、図形知覚時、記憶想起時ともにTE野の皮質表層に情報伝達することが明らかとなった。本研究により、視覚知覚・記憶想起という異なる認知プロセスに依存して、側頭葉記憶神経回路は皮質層レベルで異なるダイナミクスを示すことが明らかとなった。これらの結果をまとめNature Communicationsに論文発表した(Takeda et al, 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、脳領域間と皮質層間を接続する記憶神経回路が認知プロセスに依存して異なるふるまいを示すことを論文発表した。またこの研究成果をもとに講演を複数行った。現在、この研究成果をもとに、記憶神経回路の動作原理に関する総説をまとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
メゾスコピックスケールの記憶神経回路の動作原理についての研究成果をまとめることができたので、fMRIなどの脳機能イメージング法を用いたマクロスコピックスケールの記憶神経回路の動作原理に迫る研究を推進中である。
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