2018 Fiscal Year Annual Research Report
中脳辺縁系-大脳皮質間の機能連関による意欲と身体運動の並列処理機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
18H05151
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
西村 幸男 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, プロジェクトリーダー (20390693)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 筋出力 / 運動野 / 運動パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
モデル動物を用いた実験では、これまでに意欲を司るとされる中脳辺縁系が筋肉を支配する脊髄運動ニューロンへ越シナプスで投射する経路を世界で初めて見出していた。さらに、腹側中脳を電気刺激することで、一次運動野の活動が誘発され、筋活動も誘発されることを見出していた。今年度は中脳辺縁系から脊髄運動ニューロンへ投射するニューロンの一部がドーパミンニューロンであることを免疫組織化学実験によって明らかにした。また、電気生理実験と薬理実験を組み合わせ、一次運動野を薬理的に不活性化させると中脳辺縁系の電気刺激によって誘発される筋活動が減弱することを見出た。これらの実験から中脳辺縁系が直接運動制御機構を支配可能な神経基盤を持ち合わせていることを証明した。 ヒトを対象としたfMRI研究では、本年度は金銭報酬による運動パフォーマンス向上を検討する実験を実施した。実験は合図の提示から決められた時間よりも握力グリップを速く握れば500円または50円得られる条件と、反応時間の長短によらず金銭が得られない条件を設定した。各試行の最初に視覚刺激によって当該試行がどの条件であるかを指示した。解析の結果、腹側中脳と一次運動野が運動の準備と実行の時期に活動していることが分かった。また、腹側中脳は獲得金銭の大きい条件でより強く活動した。さらに、腹側中脳の活動が大きいほど握力グリップを握る力が強いことも分かった。これらの結果は、意欲に関わる中脳辺縁系が一次運動野と協調することで、高い運動パフォーマンスを生み出すことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル動物を用いた実験は、当初の計画に沿って薬理実験を執り行い、計画通りに進んでいる。さらに、行動課題中のサルの中脳辺縁系と運動野の同時記録まで行うことができ、現在解析中である。ヒトを対象としたfMRI実験は27名が参加し、データ解析を行い、国際学会で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル動物では、中脳辺縁系が意欲と身体運動の頑張りを制御する神経メカニズムを因果関係の点から解明することを目指す。健常サルにおいて難易度の異なる運動制御課題中の中脳辺縁系局所電位・大脳皮質脳波・筋活動・自律神経活動の多次元生体信号記録を行う。中脳辺縁系と運動野を含む神経活動間、そして筋活動間の因果律を計神経科学的に解析し、課題難易度に応じた意欲と運動パフォーマンスの因果律を明らかとする。また、因果関係をもって中脳辺縁系によって支配される運動制御機構の神経メカニズムを明らかとするために、中脳辺縁系を活性化あるいは不活性化し、神経活動を操作して運動野神経活動の変化および運動パフォーマンスの変容を観察する。これら神経活動操作を用いることで、中脳辺縁系によって支配される運動制御機構の神経メカニズムを因果関係の点から明らかにする。 ヒトを対象としたfMRI実験では、今年度見出された金銭獲得に伴う運動パフォーマンスの向上に加えて、金銭を失う可能性のある状況での運動パフォーマンスの変化の神経メカニズムを検討する実験を実施する。これにより、ポジティブな意欲とネガティブな意欲の操作を行い、それらに特有の神経基盤を検討する。また、他者による介入が意欲を操作し運動パフォーマンスに与える影響を検討するため、賞賛や叱咤の効果を調べる実験も実施する。以上により、社会的要因によって左右される意欲や精神状態と、それによって制御される身体運動制御機構の神経基盤を解明することを目指す。
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Research Products
(10 results)