2018 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of stand-alone photocatalytic reaction systems for simultaneous production of hydrogen and hydrogen peroxide
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
18H05156
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
久富 隆史 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 准教授(特定雇用) (00637481)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 粉末光触媒 / 光電極 / 過酸化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水分解反応に高活性な微粒子光触媒が酸化的過酸化物生成に応用可能であるかどうかを明らかにすることを目的とする。平成30年度は、365 nmの紫外光照射下で50%を超える見かけの量子効率で水を反応するロジウムクロム複合酸化物を担持したAlドープSrTiO3光触媒(RhCrOx:SrTiO3:Al)を用い、水溶液中の過酸化水素定量に適した反応系の構築、過酸化水素存在下での光触媒の反応特性の検討に取り組んだ。初期の検討において、光触媒粉末懸濁液を用いた場合、光励起された電子・正孔により過酸化水素の分解が進行すること、高濃度の炭酸水素塩が存在するだけでは過酸化水素の分解が抑制されないことが判明した。 そこで、年度途中から助触媒未担持のSrTiO3とMoドープBiVO4粉末を粒子転写法を用いて光電極に加工し、ナフィオン膜で仕切られた二室型光電気化学セルを用いて過酸化水素生成と水素生成の反応サイトを分割して検討を継続した。電解質として二酸化炭素をバブリングした炭酸水素カリウム水溶液中を用いると光電流値がオンセット電位近傍で大きく向上した。過酸化水素生成のファラデー効率は反応初期には80%に達していたとみられた。よって、緻密でないMoドープBiVO4粉末光アノードを用いた場合であっても先行研究と同様の効果を再現することができた。しかし、時間の経過とともにファラデー効率は低下していき、過酸化酸素の逐次的な酸化分解が進行していることが示唆された。一方、SrTiO3光アノードの場合は、電解質として緩衝作用のあるリン酸カリウム塩を用いると光電流値が向上したが、二酸化炭素バブリングした炭酸水素カリウム水溶液中でも電流電位特性に変化が見られなかったため、過酸化水素の発生は事実上起こらないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初意図していたRhCrOx:SrTiO3:Al粉末懸濁液による水素・過酸化水素生成系の構築は、SrTiO3光アノードを用いた場合でも酸化的過酸化水素生成が困難であったことを考えると、本研究課題の枠内で実現することは困難であると思われる。 粒子転写法を用いることで、MoドープBiVO4粉末からなる光アノードを用いて酸化的過酸化水素を生成することが可能であることが初めて示された。このことは、結晶性の各種粉末光触媒材料、特に不純物添加された酸化物、酸窒化物、酸硫化物などの可視光応答性光触媒材料を用いた検討が可能になったことを意味しており、当初の目的とは異なるが学術的には価値のある進展であったと考えている。しかし、現状では MoドープBiVO4粉末光アノードの表面修飾が十分に検討できておらず、過酸化水素濃度の上昇に伴うファラデー効率の低下が顕著であり、高濃度の過酸化水素の生成・蓄積に関しては十分に検討できずに多くの課題を残したため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の成果を踏まえると、光触媒粉末懸濁液を用いた水素・過酸化水素の同時生成は困難であると考えられる。したがって,平成31年度は粒子転写法を用いて既存の入手可能な可視光応答性光触媒材料を光アノードに加工し、炭酸水素カリウムを中心とした各種電解質水溶液中で過酸化水素生成反応を行い、ファラデー効率向上に効果的な電極作製法、表面修飾法を開発していく方針である。本研究により過酸化水素の生成が確認されているMoドープBiVO4粒子転写電極に対して、先行研究にあるようにある種の酸化物や炭酸塩を用いて表面修飾することで、有効な手法が見出されると期待される。有効な知見が見出されれば、それをその他の光触媒材料に応用していく。ただし、粒子転写光アノードでは、工程上、後処理や表面修飾できる条件が限られるため、どのような作製・修飾法が効果的であるのかを創意工夫して独自に開発していく。最終的に、AlドープSrTiO3光触媒に対しても表面修飾を施したうえで過酸化水素生成反応の再評価を行い、本研究課題としての結論を導く。
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Research Products
(2 results)