2018 Fiscal Year Annual Research Report
CO2還元助触媒開発に向けた鉄硫化物上におけるプロトン移動誘起とZスキームの構築
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
18H05159
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 晃 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (00756314)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 二酸化炭素還元 / 鉄硫化物 / プロトン移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然界に豊富に存在する金属硫化物、特に鉄系硫化物を用いた二酸化炭素還元電極触媒の開発を目的としている。特に、活性向上の指針として、中間体へのプロトン付与という観点から、プロトン供与能を有するアミノ酸系分子の影響について検討を行った。 水熱合成法により合成を行った鉄-ニッケル硫化物を電極触媒として用い、硫酸ナトリウム水溶液を電解質として用いたガス拡散電極系により二酸化炭素還元を行った。その結果、生成物として一酸化炭素とギ酸が得られた。また、この系にとあるアミノ酸系分子を添加することで、一酸化炭素生成の活性は低下したものの、ギ酸の生成速度は大きく向上した。したがって、アミノ酸添加により反応生成物のスイッチングに成功したと言える。ここで見られた反応速度は、既存の鉄硫化物を用いた電気化学的二酸化炭素還元反応と比べて最高レベルの活性である。反応のpH依存性を調べると、アミノ酸分子のプロトン化状態が活性向上を左右することが判明した。上記の成果は、自然界に豊富にある鉄硫化物を電極触媒として適用する上で大きな知見となり得る。 今後は分光測定を適用することで本系におけるメカニズムの詳細を明らかにしていくとともに、さらなる活性の向上を目指す。将来的にはこの材料と可視光応答型半導体、さらには酸素発生触媒と組み合わせることで、普遍元素からなり、かつ水中において安定に駆動する人工光合成系の構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、鉄硫化物を電気化学的二酸化炭素還元の触媒として用い、プロトン移動という観点からその活性向上、ならびにその鉄硫化物を用いた人工光合成系の構築を目的としている。平成30年度は触媒開発に従事する計画であり、鉄とニッケルを含む硫化物の合成ならびにその電気化学的二酸化炭素還元能の評価を行った。その結果、予想通り鉄-ニッケル硫化物は水系において電気化学的な二酸化炭素の還元に活性を示した。さらに、プロトン移動の促進を期待し、アミノ酸分子であるヒスチジンを電解質に添加することで、鉄硫化物としては世界最高レベルの活性の向上に成功した。またpHを変えた実験等により、仮説通りプロトン移動が関与する機構で反応が進行していることを示唆する結果を得ているため、鉄硫化物を用いた二酸化炭素電極触媒の開発、という当初の目標をおおむね達成していると考えられる。 一方で、詳細なメカニズムの断定には至っておらず、今後はこちらを明らかにしていくことが更なる活性の向上に向けて必要となる。さらに、現在用いている鉄硫化物は複数の結晶相を含む混合物であるため、これらの内どの結晶相が活性に寄与しているのか、あるいは混合物であることが有利に働いているのか、という点に関しては今後明らかにしていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究期間において、金属硫化物を用いた二酸化炭素還元電極触媒の開発を行ってきた。今後はこれまで得られた結果をベースとして、大きく1.反応のメカニズムの解明、および2.光半導体への担持による人工光合成系の構築、の二つを推進する。 触媒開発においては、活性の向上には成功したものの、いまだそのメカニズムに関しては明らかになっていない。そこで、今後は分光学的な測定手法を取り入れることでメカニズムの解明を進めていく。具体的には、その場電気化学赤外分光系を用い、どのような中間体を経由して反応が進行していくか、に関して知見を得る。また、同位体効果なども検討することで反応メカニズムに迫っていく。ここから得られる知見を適宜触媒設計へとフィードバックしていくことで、より活性の高い電極触媒の開発を目指す。 一方で、作成した二酸化炭素還元触媒を光半導体へと担持することで、光機能化を図る。こちらをカソード側、さらに酸化マンガンを担持した光半導体をアノード側に適用し、酸化マンガンが水からの酸素発生反応を触媒することで、光照射により水を電子源とした二酸化炭素還元系の構築を目指す。光半導体としては、これまで当研究室で実績のあるCaFe2O4(カソード側)やBiVO4(アノード側)を用いる。
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Research Products
(1 results)