2018 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical Properties of Asymmetric Multi-metal Cores Formed in a Small Cavity
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
18H05162
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
舩橋 靖博 大阪大学, 理学研究科, 教授 (00321604)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マンガンクラスター / 籠型配位子 / 分岐状配位子 / 異種金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成の光化学系II(PSII)で水の酸化を行う酸素発生中心(OEC)のMn4Caクラスターは「歪んだ椅子」と呼ばれる非対称な構造を持つ。これに類似の錯体を合成するため、我々は嫌気条件で籠型配位子に強塩基性のアミドを有する遷移金属塩と水を順次加えてM3(OH)3型の三核錯体(Mn, Fe, Co)を得た。さらに一つの水分子が内部で一つの金属中心と結合した構造(Fe, Co)やヘミキュバン型コアを有する錯体(Mn, Fe, Co)が得られ、天然のMn4Caクラスターに類似したMn3Na(OH)4型の非対称な異種金属含有のキュバン型マンガンクラスターの形成過程が明らかとなった。さらに電気化学的な性質の検討も行い、異種金属のキュバン型マンガンクラスターの形成に伴う酸化還元電位の変化を測定し、ナトリウムイオンとカルシウムイオンのイオン交換が可能であることや、アルカリ・アルカリ土類金属が電荷の補償の効果だけでなくキュバン構造内部に挿入されることがマンガンクラスターの酸化還元挙動に大きく影響することを改めて明確に見出した。 次に複数のβ-ケトイミナート部位を持つ複数の分岐状配位子を用いて多核錯体(Mn, Fe, Co)の合成を行った。前述の籠型配位子と同様に嫌気条件で分岐状配位子に強塩基性のアミドを有する遷移金属塩を加えるとマンガン錯体においてはまず三核錯体が得られ、分岐した鎖長を伸長して水の添加も行うと、ヒドロキソ基で架橋されたcorner-shared-cubane状構造を有するMn7(OH)8型の七核錯体も得られた。さらに分岐状配位子の立体障害をより大きく調整して酸化剤と水を添加することで、それぞれ別種のヘミキュバン型のMn4(OH)2型の四核錯体などの種々のクラスター構造が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
籠型配位子を用いて異種金属含有のキュバン型マンガンクラスターの形成過程が明らかとなった。これは天然の酸素発生中心(OEC)に含まれるMn4Caクラスターと類似の構造が得られただけでなく、その酸化還元挙動も含めると、OECが蛋白質中で自発的に形成するPhoto-assemmbly過程がマンガン(II)状態から出発する際の機構解明に繋がる成果である。その非対称型キュバン型構造が基底状態で完全に電子スピンを打ち消し合わないという電子構造の特徴を示す結果も具体的に得られた。さらに他の第一遷移金属錯体の合成や分岐状配位子を用いても別種のヘミキュバン型構造の合成にも成功しており、様々な比較や性質の検討も継続して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に籠状配位子を利用して合成した各種の非対称な多核金属錯体の反応性や、そこで生成する活性中間体種の立体化学および 電子構造に関する情報を得ることを目的とした検討を行う。アルカリ・アルカリ土類金属を含む非対称型の異種多核マンガンクラスター錯体を前駆体として、低温下で酸化するなどして酸素活性化中間体種の合成を行い、各種の解析を行う。OEC のいわゆる触媒サイクルにおいて、理論計算による各種の重要な反応中間体種の構造が提唱されており、これらの活性種の構造状態や酸化状態を再現することが目標である。このような非対称構造はフレキシブルな一般の多核化配位子では困難であり 、狭小空間を有する籠状配位子内部で生成することが期待できる。さらに、合成したOECに近い非対称な異種五核金属キュバンクラスターとその類似化合物について、酸素発生反応の追究を行う。 初年度に引き続き、その他の遷移金属を全てターゲットに様々な非対称な異種多核金属中心構造を籠状配位子内部に合成するとともに、分岐状配位子においても同様な検討と比較を行う。
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