2018 Fiscal Year Annual Research Report
水分解反応を形成する高電位形成の解明とエネルギー創生
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
18H05177
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鞆 達也 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 教授 (60300886)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光化学系II / 光化学系I / クロロフィル / 人工光合成 / 初期電子供与体 / 初期電子受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成は地球の根幹を支えている反応であるが、酸素発生型光合成は水を電子源としてしている特徴がある。水分解を担う場は、光化学系IIの水分解触媒中心Mn4CaO5クラスターであり、近年、岡山大学沈研究室の結晶構造解析によりその構造が詳細に明らかになった。しかし、Mn4CaO5クラスターが水から電子を引き抜くためには、電荷分離を担うクロロフィル(初期電子供与体)の電位が水のそれより高くなくてはならないという物理法則が存在する。一般的なクロロフィルの電位が+0.5 V付近なのに対し、水の電位は+0.8 V 程度であり、このままでは電位が足りないので、何らかの工夫をして光化学系IIの初期電子供与体の電位は+1.2 V程度となっている。本研究では新規クロロフィルをもつ光化学系複合体を摂動として用いることにより、この解明に着手している。本研究の目的の一つは新規クロロフィルの一つクロロフィルdを主要色素としてもつシアノバクテリアから最少の電荷分離能をもつ光化学系II反応中心複合体を単離・精製して、その性質から課題を明らかにすることである。本年度は単離光化学系II反応中心複合体の分光解析を行い初期電子受容体のエネルギー準位を明らかにした。また、初期電子受容体の励起スペクトル解析により、初期電子受容体近傍に位置するクロロフィルa分子の局在部位を示唆することができた。現在、初期電子供与体分子の同定とエネルギー準位の解析を行っている。また、新規クロロフィルであるクロロフィルfをもつシアノバクテリアから光化学系IIの単離に成功し、この光化学系Iとともに反応機構の解明を進めている。また、水分解を担う光化学系を用いた人工光合成系の創生は持続可能なエネルギー供給につながることから、光化学系IIと化学材料を結合させたエネルギー変換素子についても実験を進めており、学会発表等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロロフィルdを主要色素としてもつシアノバクテリアから、最少の電荷分離能をもつ光化学系II反応中心複合体の単離精製系を確立した。このため、種々の分光解析が可能になり、初期電子受容体のサイトエネルギーを決定できた。本標品を用いて詳細な分光解析を行うことにより、新規クロロフィルの局在部位とエネルギー順位の全貌解明が期待できる。クロロフィルfをもつシアノバクテリアからの光化学系標品の単離精製系も確立した。クロロフィルdと同様に解析を行っており、光化学系IIの高電位形成の解明が期待できる。 光化学系を用いた、化学材料との組み合わせによる光エネルギー変換を報告した。エネルギー変換の効率をチューニングすることにより、進捗が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
光化学系II反応中心複合体の単離精製は複合体を形成しているタンパク質および色素を除去していくことから、原理的に収率が低くなる。結晶化を含むいくつかの分光解析には大量に試料が必要となる場合があるので、培養方法の検討、単離精製方法の検討を行い収率の改善を進めていく。 また、光化学系に結合した色素の分子種を知る方法として、電荷分離後の電荷再結合反応を用いる方法がある。この測定のためには、第二次電子受容体を還元処理することにより、除去する必要があるが新規クロロフィルであるクロロフィルdは化学的に還元するとクロリン環側鎖が還元されてクロロフィルaとスペクトル的に区別ができなくなる。これは、電荷再結合による解析を困難にしている。このことから、有機溶媒等を用いて、電子受容体を除去する方法を開発し、多方面から、光化学系の性質を明らかにしていく。 種々の高度に精製された標品をもちいて、詳細な物理化学的解析を行い課題を明らかにする。
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