2019 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル時代の複雑化する社会的責任のネットワーク科学による見える化
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing a new paradigm of social/human sciences based on rerational studies: in order to overcome contemporary global crisis |
Project/Area Number |
19H04518
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
水野 貴之 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (50467057)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 計算社会科学 / 複雑ネットワーク科学 / 紛争研究 / グローバリゼーション / ビッグデータ / 社会的責任 / 経済物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度から平成30年度にかけて研究代表者として基盤B「ビッグデータ先導型紛争研究:紛争の潜在的加害者の見える化」を実施し,紛争地と我々との経済的なつながりをデータ科学(ビッグデータ・複雑ネットワーク科学)で数理的に明らかにしてきた.本研究課題では,この成果を応用して,国際政治学者とともに政策応用できる形で紛争に対する複雑な社会的責任を見える化する基盤を構築する.具体的には,(1)グローバル化により我々の財や金融商品の購入が紛争被害に及ぼす影響の計測と指数化,(2)グローバル経済ネットワークにおいて紛争主体と接続することで得られる利潤の計測と指数化,(3)グローバルな資本流入による民族間の紛争リスクの計測と指数化,(4)紛争や対立抑止に関する政策の科学的支援に関する研究を進めている. (1)では,投資信託などの金融商品のグローバルデータを整備し,金融商品と株式との2部グラフを作成した.ネットワークで繋がったプレーヤー間の投票ゲームにおけるプレーヤーの投票力を測る指標Network Power Indexを用いて,外国政府によるグローバル株所有ネットワークを通じた間接的な基幹産業支配の事例を調査した. (2)では,アメリカ合衆国商務省産業安全保障局や経済産業省など各国が公表するサンクションリストと,ニュース記事でアンチESGが報じられた企業のリストを整備した.これらのリストと,グローバルな企業間ネットワークを接続する企業属性と表記ゆれを考慮した名寄アルゴリズムを開発した. 本年度は(3)と(4)については実施しなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度末からのCOVID-19の流行により,発表を予定していた国際会議で延期や中止が相次いだ.成果発表の計画で,やや遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「グローバル化により我々の財や金融商品の購入が紛争被害に及ぼす影響の計測と指数化」および,(2)「グローバル経済ネットワークにおいて紛争主体と接続することで得られる利潤の計測と指数化」では,本年度に整備した投資信託などの金融商品とアンチESG企業とを,同じく本年度に整備した名寄アルゴリズムを用いて,グローバル株所有ネットワークに接続する.そして,Network Power Indexを適用して,投資信託がアンチESG企業の経営に与える影響力を算出する.アンチESG企業の経営に与える影響力と,アンチESG企業から得られる配当とを比較し,グリーン投資の現状について考察する.(3)「グローバルな資本流入による民族間の紛争リスクの計測と指数化」では,外国政府によるグローバル株所有ネットワークを通じた間接的な基幹産業支配の状況を明らかにし,可視化するWebアプリケーションを開発する.(4)「紛争や対立抑止に関する政策の科学的支援」では,アンチESG企業の経営に与える影響力と,アンチESG企業から得られる配当との差異から,紛争や対立抑止に効果的な投資の判断をくだせる仕組みを提案する.
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