2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishing a protocol of effective radiocarbon dating for old samples of the Middle to Upper Paleolithic transition
Publicly Offered Research
Project Area | Cultural history of PaleoAsia -Integrative research on the formative processes of modern human cultures in Asia |
Project/Area Number |
19H04523
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山根 雅子 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (30785928)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炭素14年代測定 / 中期/後期旧石器時代移行期 / 加速器質量分析 / パレオアジア文化史学 / 炭化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
中期~後期旧石器時代の移行期(5万年前から3万年前頃)の信頼できる炭素14年代データを蓄積し、現生人類のアジアへの拡散や文化史の正しい理解に寄与するために、2019年度は(1)炭化物試料の処理方法及び評価方法の検討、(2)パレオアジア文化史学プロジェクト関連試料の炭素14年代測定を実施した。 文献調査と基礎実験の結果から、炭化物に混入した二次的な外来炭素を完全に除去することは困難であると示唆された。特に、西アジアや中央アジアなどの乾燥地帯の遺跡から発掘される保存の悪い炭化物は、外来炭素を除去するための強い化学処理を適用することが難しいため、試料中に残存した外来炭素の影響は小さくない。さらに、外来炭素がもつ炭素14年代が分からないため、測定結果を補正することもできない。しかし、従来とは異なるアプローチをとることにより、保存の悪い炭化物試料から信頼できる炭素14年代が得られる可能性があることが分かった。本研究成果の一部は、2019年12月に開催されたパレオアジア文化史学第8回研究大会にて発表された。 パレオアジア文化史学プロジェクトの枠組みの下で、アジアの広範囲(ヨルダン、カザフスタン、タジキスタン、ロシア、中国)から採取された炭化物(炭化骨を含む)42試料、並びに、骨及び歯19試料の炭素14年代測定を実施した。名古屋大学宇宙地球環境研究所にて炭素14測定のための試料調整を行い、同研究所が運営するHVEE社製3MVタンデトロン加速器質量分析装置で炭素14測定を実施した。試料調整の過程で混入した炭素の影響や加速器質量分析装置の安定性の検討を十分に行い、信頼できる炭素14年代を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は炭化物試料の処理方法及び評価方法の検討を集中的に行い、2020年度に実施予定であった保存の悪い炭化物試料の検討にも着手した。一方、当初計画していた骨試料から抽出したコラーゲンのウルトラ・フィルターリング法の検討は実施することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も大枠では当初の研究計画のとおり進める方針である。炭化物試料の処理方法及び評価方法の検討を引き続き行うとともに、骨試料から抽出したコラーゲンのウルトラ・フィルターリング法の検討も行う。これらの研究成果をもとに、考古試料の炭素14年代測定プロトコル、並びに、測定結果の評価プロトコルを作成し、公開する。 パレオアジア文化史学プロジェクト関連試料の信頼性のある炭素14年代測定も引き続き実施する。二年目である2020年度は、測定依頼を受けてから結果報告までに要する時間の短縮が見込め、2019年度よりも多くの試料の測定が期待できる。
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