2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsideration of denticulate lithic industries in East Asia around the modern human dispersal event
Publicly Offered Research
Project Area | Cultural history of PaleoAsia -Integrative research on the formative processes of modern human cultures in Asia |
Project/Area Number |
19H04524
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上峯 篤史 南山大学, 人文学部, 准教授 (70609536)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国旧石器 / 新人 / ホモ・サピエンス / 後期旧石器 |
Outline of Annual Research Achievements |
東アジアでは中期旧石器的な鋸歯縁石器群が時期を問わず散見され、新人定着の痕跡が不明瞭とされてきた。しかし近年の研究成果は、この理解に疑問を投げかける。本研究では中国の鋸歯縁石器群の精査から、新人定着にともなう文化・行動要素の変化を特定し、東アジアの新人文化形成プロセスに対する新しい理解を示す。 2019年7月に中国河北省泥河湾盆地を訪問し、河北省文物研究所の王法崗博士の協力のもと、新人定着期を考えるうえで重要となる遺跡群を巡検し、堆積物の状態を確認した。なかでも西白馬営遺跡では帯磁率分析用のサンプルを採取し、すべて現地で測定した。その結果は、この遺跡が約4万年前の遺跡であることを示しており(従来説では約2万年前の細石刃文化期の遺跡とされていた)、鋸歯縁石器の変遷を考えるうえでの定点が得られた。この解析結果について、2019年11月に開催された旧石器文化談話会第120回定例会において、近年西白馬営遺跡の再発掘に取り組んでいる周振宇博士(中国社会科学院考古研究所)と意見交換する機会をもった。 2019年11月には中国科学院古脊椎動物与古人類研究所および河北省文物研究所を訪問し、陝西省徐家城遺跡および河北省西白馬営遺跡等の出土遺物の熟覧調査を実施した。徐家城では石英製の鋸歯縁石器群に、珪質の石材を利用した縦長剥片生産技術に関連する資料がともなうことを確認した。同石器群の様相および新旧人類交代劇に関わる評価について、李鋒博士(中国科学院古脊椎動物与古人類研究所)と議論した。西白馬営遺跡では、鋸歯縁石器群に、きわめて良質な岩石を用いた小石刃が微量ともなうことを確認した。西白馬営遺跡の様相ならびに泥川湾盆地における関連遺跡の年代精査の方向性について、王法崗博士と議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は出土遺物の実見調査に加え、泥河湾盆地における現地調査を実施することができた。カウンターパートとは現地での継続調査の相談を終えており、出土遺物の再評価のみならず、年代観の再検討を実施できることとなった。以上の点から、当初予定していた研究が順調に遂行できたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は引き続き、泥河湾遺跡群の年代再検討を目的とした現地調査、および出土遺物の熟覧作業を予定している。しかしながら、令和2年度は訪中しての遺跡・遺物調査が困難とも予想される。訪中できない場合には、昨年度までに獲得したサンプルの分析、得られたデータの解析を徹底的に進める計画である。新人定着期における人類の行動変容に対する従来説(Mcbrearty2000)が東アジアにも適応できるか否か、を再検討することで、別のアプローチから研究目的を達成する。
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