2019 Fiscal Year Annual Research Report
Realization of growth technology of high quality crystals on heterogeneous substrates by stress relaxation using self-generated voids
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
19H04534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
出浦 桃子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90609299)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己形成特異構造 / ボイド / ヘテロエピタキシャル成長 / 内部応力緩和 / シリコン表面炭化 / 炭化ケイ素バッファ層 / 窒化物半導体成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,従来の薄膜成長で常識であった「欠陥や表面凹凸のない高品質基板を用いる」という概念の打破に挑戦する.すなわち,基板表面近傍に存在するボイド(特異構造)を用いた内部応力緩和により,異種基板上への高品質結晶成長技術を実現することを最終目標とし,Si基板上の窒化物半導体成長で解析・実証する. 2019年度は,基板表面の原子ステップの状態を変化させるため,Si基板のオフ角依存性を検討した.いくつかの面方位について,異なるオフ角がついたSi基板を同時に炭化した.激しい炭化条件では,オフ角が大きい場合にボイドサイズが二極化する傾向が見られたが,表面平坦性などには影響は見られず,他の炭化条件ではいずれも明確なオフ角の影響は見られなかった.炭化前または炭化中に明瞭なステップが現れなかった可能性や,オフ角および方向が適切でなかった可能性がある. 一方,SiC/Si基板上のGaN成長については,SiCに対するGaNの濡れ性・付着確率が低く,その向上にAl原料先行供給が有効であることが報告されているため,本研究でも採用した.昨年度,表面平坦なボイドなしSiC/Si基板上での検討により,Al製膜種が凝集することなく表面全面を被覆することが重要であることが分かっている.最適なAl先行供給条件を見出すことにより,表面平坦かつ単一配向のGaN連続層を得ることに成功していた.そこで今年度は,ボイドあり表面凹凸SiC/Si基板に対してGaN成長を行った.昨年度と同様のGaN成長と同じ温度である高温先行供給では良好なGaNが得られなかったため,先行供給温度依存性を検討した.SiC表面でのAl製膜種の吸着・脱離および拡散のバランスが適切な中温域においてのみ,表面平坦かつ単一配向のGaN連続層を得ることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炭化において温度依存性を検討したが,低温域での実験結果が想定と異なり,考察に時間を要している.また成長においては装置の不具合が続いており,実験回数が確保できなかった.さらに,年度末は新型感染症の影響により,実験がほとんど行えなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
1) Si表面炭化によるSiC/Si基板の作製 「表面平坦な自己形成ボイドSiC/Si基板」を得るための炭化条件を確立する.炭化実験の制御パラメータとして,炭化温度・CO分圧・基板オフ角の3点を引き続き検討し,これらが表面平坦性やボイド密度・サイズに与える影響を明らかにする. 2) 窒化物半導体の結晶成長・結晶性評価 表面凹凸なボイドありSiC/Si基板上へのGaN成長について,引き続きAl先行供給条件とGaN層の関係を調べる.1)で表面平坦な自己形成ボイドSiC/Si基板を得られ次第,GaN成長を行い,続いてAlGaN層など混晶の成長も検討する.1)・2)で作製したSiC/Si基板および窒化物半導体層についてさまざまな評価を行い,SiC/Si基板の状態が窒化物半導体層の結晶性に与える影響を調べる.具体的には,表面平坦性・結晶配向性・膜厚・ボイド密度およびサイズ等の構造評価,転位密度等の微細構造評価,電気・光学特性評価を行う.なお,1)と2)は可能な限り並行して進め,得られた結果を互いにフィードバックする. 3) 内部応力の解析 窒化物半導体層の結晶性が良好な試料とそうでない試料を中心に,マクロ・ミクロ両方の観点から内部応力を解析する.2)で得られた結果との相関を調べることで,SiC/Si基板のボイドが,内部応力の緩和を通して窒化物半導体層の結晶性向上に与える影響を定量的に考察する.以上の知見から普遍的な学理を抽出し,提案手法を他材料系にも広く適用可能な技術として確立する.
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