2019 Fiscal Year Annual Research Report
特異表面ナノ構造体と酸化物半導体メタマテリアルの光学制御
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
19H04537
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 裕章 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (80397752)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化物半導体 / プラズモン / メタマテリアル / 特異構造体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ZnO(10-10)薄膜成長表面上に自己形成される特異的なナノ構造体に着目し、従来の薄膜成長(layer-by-layer成長による2次薄膜成長)とは異なる多層構造や界面構造に由来する新しい光学的特性(表面プラズモン励起)の観測を目指した。2019年度(初年度)は、特異的な表面ナノ構造体の作製を高速電子線回折装置(EHEED)が装備されたパルスレーザー堆積法(PLD)を用いて、非極性ZnO(10-10)薄膜成長表面上に形成させた。作製された表面ナノ構造体は、原子間力顕微鏡(AFM)及び透過電子顕微鏡(TEM)を用いて局所的な構造解析を実施した。本年度では、得られた表面ナノ細線構造体がZnOハイパーボリックメタマテリアル(ZnO-HMMs)からの高効率な表面プラズモンが励起可能なであるかどうかの検討を実施した。表面ナノ構造体は1次元の細線形態を有し、細線幅は100 nm程度を有し、ナノ細線の長さは5ミクロン程度と大変長い。また、ナノ細線の高さは20 - 40 nm程度を示した。更に、X線回折(XRD)の測定結果から、ナノ細線構造は完全な単結晶体を示し、紫外励起に伴いバンド端に明瞭な励起子発光が観測された。これ等の構造学的及び光学的な評価は、得られたナノ構造体が高い結晶性を持つことを示唆する。また、2020年度(次年度)に向けて、ZnO(10-10)薄膜成長表面にMgZnO/ZnO多層周期構造の形成、及びGa添加ZnOの縮退金属層の形成を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度では、ZnO HMMs構造から表面プラズモン励起に関連した光学的特性を引き出すために効果的な1次元的な表面ナノ細線構造体を得ることに成功した。また、表面ナノ細線構造体の形状サイズ(幅・長さ・高さ)をPLD法の成長条件(酸素分圧・基板温度)を変化させることで幅広く制御可能であることを見出した。このナノ細線構造体の形状制御は、1次元ナノ細線が薄膜成長中に得られる形成メカニズムの解明に寄与し、ステップエッジバリア効果が重要な役割を果たした。 更に、ZnOのホモエピタキシー成長技術を用いることで、良質な結晶性を持つ表面ナノ細線構造体を得ることが出来た。特に、1000nm以上の長いナノ細線形状が得られた。その理由として、基板と薄膜の界面の格子整合性が関連することが分かった。次年度(2020年度)の予備的実験として、表面ナノ細線構造体を土台とした多層周期構造(量子井戸)の形成にも成功した。これ等の研究成果から、研究の進歩状況は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度(次年度)は、表面ナノ細線構造体を用いて高効率な赤外表面プラズモン励起を目指す。表面プラズモン励起は、自由電子の集団的運動に起因し、ナノ細線形状が表面プラズモン励起のプラットフォームとして機能する。金属的性質を持つZnO層の形成に向けて、ドナー不純物元素を試料母体に添加させることで実現する。本課題では、Ga添加ZnO (ZnO:Ga)を採用する。金属伝導性を示すZnO:Ga層を自己形成された表面ナノ細線構造のPLD法で形成させる(ただし、成長条件は既に確立されている)。故に、ZnO:Ga層を表面ナノ細線表面上に蒸着し、赤外分光に装備された角度分解偏光反射(ATR)ユニットを用いて、表面プラズモン励起を観測する。そして、表面ナノ細線構造の形状制御と表面プラズモン励起の相関を検討する。最後に、赤外域で高効率な表面プラズモン励起が可能なナノ細線構造を見出し、生体分子等に存在する分子振動励起の増強効果(SERA効果)を観測する。SEIRA効果は、バイオセンシング分野において重要な光学的性質であり、分子認識可能なバイオセンシングデバイスの創出に寄与する。
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Research Products
(11 results)