2019 Fiscal Year Annual Research Report
チエノイソインジゴ骨格を基本とする近赤外光応答型単結晶トランジスタの創出
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
19H04538
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
芦沢 実 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80391845)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チエノイソインジゴ / 電界効果トランジスタ / アンバイポーラ特性 / 近赤外光吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素結合可能なチエノイソインジゴ骨格の良末端に、かさ高いアルキルシリル基を導入したチエノイソインジゴ分子の合成を行った。ブトキシカルボニル基を保護基として窒素原子を保護したチエノイソインジゴ分子を合成した。この分子にカップリング反応前駆体となる臭素原子を導入し、薗頭反応を用いてトリイソプロピルシリルアセチレンと反応させて標的分子を合成することに成功した。ブトキシカルボニル基の脱保護は、当初は酸による脱保護を試みたが、標的分子を得ることができなかったため、熱による脱保護を行った。合成した分子の酸化還元特性及び光学特性を評価し、分子の電子構造を明らかにした。また再結晶法により単結晶を作成し、単結晶構造解析を試みたが得られた結晶の質が良くいため結晶構造を求めることはできなかった。そこで蒸着法により結晶性の薄膜を作成し、トップコンタクト型の電界効果トランジスタを作成してキャリアの輸送特性を評価した。標的分子は移動度は低いものの狭いエネルギーギャップに起因して、ホール伝導と電子伝導を両立するアンバイポーラ特性を示した。 本研究課題は近赤外光吸収特性を示す分子を扱うが、合成した分子が近赤外領域に光吸収特性を示すためにはパイ共役系の拡張が必要であることが分かった。そこでモデル分子として、チエノイソインジゴ骨格の単量体から6量体までのオリゴマーを合成した。特に6量体は近赤外領域の1700nmに吸収極大を示した。6量体の合成は多段階の合成を必要とし、また低収率のため効率的にパイ電子系を拡張するためにチエノイソインジゴ骨格にキノイド構造を導入した新規骨格を設計・合成することを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チエノイソインジゴ骨格に水素結合可能な、水素原子を残した分子の合成法を開拓した点に新規性があると考えている。またこの合成法を用いることで、従来の合成法では1段階目の反応でアルキル側鎖を導入する必要があったが、本手法を用いることでグラムスケールでの大量合成が可能となり、保護基を脱保護したのちに種々の側鎖を導入できることに汎用性がある。また単量体分子ではあるが、チエノイソインジゴ骨格の良末端にかさ高いアルキルシリルアセチレンを導入した新規分子の合成に成功した。さらにこの分子は単量体ながら狭いエネルギーギャップを示し、チエノイソインジゴ骨格の近赤外光吸収特性を示す分子開発への有用性が示された。良質な単結晶が得られなかったため、単結晶構造解析及び単結晶トランジスタの作成には至らなかったが、蒸着法により結晶性の薄膜を作成し電界効果トランジスタにおいてアンバイポーラ特性を観測したことは、次年度へむけての本研究課題の進捗と考えている。 また本年度は合成法や収率の観点からはまだ改良の余地があるが、チエノイソインジゴの単量体から6量体までを合成し、その電子構造を系統的に明らかにしたことは学術的に意義があると考えている。 チエノイソインジゴ骨格の汎用性のある合成法を開拓し、分子の基礎物性を詳細に調べ次年度へ向けての新規なチエノイソインジゴ誘導体の分子設計の提案に至ったことを鑑みて本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
チエノイソインジゴ骨格は狭いエネルギーギャップに起因して、近赤外光吸収特性を示す有用な骨格であることが示された。理論計算と実験の両側面からこの骨格は、芳香族性とキノイド性のバランスに優れた骨格であることが示唆された。また前年度までの結果から本研究課題のターゲットである近赤外光領域にわたる長波長領域の吸収特性を示すためには、さらなるパイ電子系を拡張する必要がある。 従って本年度は、赤外光領域の光吸収特性を付与するために、チエノイソインジゴ骨格にキノイド構造を導入した新規骨格を設計する。キノイド構造はパイ電子系の拡張に有利であり光吸収領域を長波長側にシフトすることができる。しかしキノイド構造は一般に不安定な構造であり、安定なキノイド型チエノイソインジゴ骨格を構築するために、キノイド構造の末端を芳香族性のベンゼン環及びチオフェン環でキャップした分子設計とする。ベンゼン環及びチオフェン環のグリニャール試薬を用い、チエノイサチン部位への付加反応と還元反応をベースにした合成法を考えている。本研究提案においては、光熱変換によるアルキルシリル基の回転による欠陥構造導入が鍵となる。従って計算からアセチレン軸回りのエネルギー障壁を見積もるとともに、熱測定から構造相転移の有無を調べ、アルキルシリル基のかさ高さと相転移点の相関を明らかにする。アルキルシリル基が形成する欠陥空間と、キャリア輸送を担うチエノイソインジゴ骨格の自己集積構造の競合(高秩序と柔軟性)を分子設計の観点から解明する。
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[Journal Article] Functionalized NIR-II Semiconducting Polymer Nanoparticles for Single-cell to Whole-Organ Imaging of PSMA-Positive Prostate Cancer2020
Author(s)
Jiayingzi Wu, Hyeon Jeong Lee, Liyan You, Xuyi Luo, Tsukasa Hasegawa, Kai-Chih Huang, Peng Lin, Timothy Ratliff, Minoru Ashizawa, Jianguo Mei,* and Ji-Xin Cheng*
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Journal Title
Small
Volume: 2020
Pages: 2001215 (1-13)
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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