2019 Fiscal Year Annual Research Report
一般化アンサンブル法を用いたGaN結晶成長の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
19H04541
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
洗平 昌晃 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (20537427)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自由エネルギー解析 / ニューラルネットワークポテンシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化ガリウム(GaN)の結晶成長における気相反応に対して,申請者が開発した自由エネルギー計算を適用した.第一原理電子状態計算手法をエネルギー計算器として計算を実行し,Ga(CH3)3がH2やNH3分子と反応する際の自由エネルギーランドスケープを得ることができた.しかしながら,得られた自由エネルギーランドスケープから速度論パラメータを得るためには,その精度がまだ不十分であった.その上,計算に要した時間は想像以上であり,この計算を複数回実行するのが厳しいことが分かった.この問題を解決するために,ニューラルネットワークによる古典ポテンシャルを作成し,それをエネルギー計算器として採用し自由エネルギー計算を実行したところ,その計算速度は今後研究を推進していくうえで非常に現実的なものであった.しかしながら,学習していない領域(外挿領域)の構造がたびたび出現したため、分子構造が不自然に分解してしまった.一般的に,非線形回帰に基づく機械学習のアルゴリズムは,外挿領域に対して予測精度が著しく低下することが知られている.従来のニューラルネットワークポテンシャルの作成方法では学習データの重複を排除することができず,これが学習データの収集に大きな制限をかけることになり、ひいてはニューラルネットワークポテンシャルの精度の悪化(外挿問題)と学習の非効率化をもたらしている.今後は原子ごとにニューラルネットワークポテンシャルを学習する方針に転換する.これにより,ニューラルネットワークの入力値の分布が均等となるように学習データを収集することができ効率の良い学習が可能となる.さらに,特徴的な環境にいる原子を漏らさず抽出することができるためニューラルネットワークの外挿問題に対しても改善が期待される.今後は,この方針でロバストなニューラルネットワークポテンシャルを作成し研究を推進する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
窒化ガリウム(GaN)の結晶成長における気相反応では,様々なプロセスを経てGa(CH3)3からGaHに分解すると考えられている.これらのプロセスに対して申請者が開発した自由エネルギー計算を適用した.第一原理電子状態計算手法をエネルギー計算器として計算を実行し,Ga(CH3)3がH2やNH3分子と反応する際の自由エネルギーランドスケープを得ることができた.しかしながら,得られた自由エネルギーランドスケープから速度論パラメータ(活性化障壁高さや試行頻度)を得るためには,その精度がまだ不十分であった.その上,計算に要した時間は想像以上であり,この計算を複数回実行するのが厳しいことが分かった.この問題を解決するために,機械学習手法の一つであるニューラルネットワークによる古典ポテンシャルを作成し,それをエネルギー計算器として採用し自由エネルギー計算を実行した.第一原理電子状態計算手法をエネルギー計算器とした場合に比べて2000倍も速い計算速度が得られた.今後研究を推進していくうえで非常に現実的な計算速度である.しかしながら,学習していない領域(外挿領域)の構造がたびたび出現し、不自然な力が原子に加わったため分子構造が不自然に分解してしまった.今後はこの問題を解決し,ニューラルネットワークポテンシャルをエネルギー計算器とした自由エネルギー計算を実施していく.二年目には気相反応で生成されたGaH分子がGaN基板に吸着されるプロセス,ならびに吸着した分子にNH3分子が反応するプロセスに対して自由エネルギー計算を実施する予定であったが,気相反応の解析に今しばらく時間が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
計算手法である第一原理マルチカノニカルモンテカルロ法は,並列化効率は非常に高いものの,想像以上に計算時間を要することが判明した.この計算を実行しつつ,非常に高速なニューラルネットワークポテンシャルによる計算も実行していく.しかしながら,特に今回の様に非常に自由度の高い気体分子(気相)の反応に対して,ニューラルネットワークポテンシャルによる計算を安定に実行するためには解決すべき問題がある.実際にニューラルネットワークポテンシャルで計算を実行すると,学習していない領域(外挿領域)の構造がたびたび出現し、不自然な力が原子に加わったため分子構造が不自然に分解してしまう.一般的に,非線形回帰に基づく機械学習のアルゴリズムは,外挿領域に対して予測精度が著しく低下することが知られている.従来のニューラルネットワークポテンシャルの作成方法では学習データの重複を排除することができず,これが学習データの収集に大きな制限をかけることになり、ひいてはニューラルネットワークポテンシャルの精度の悪化(外挿問題)と学習の非効率化をもたらしている.今後は原子ごとにニューラルネットワークポテンシャルを学習する方針に転換する.これにより,ニューラルネットワークの入力値の分布が均等となるように学習データを収集することができ効率の良い学習が可能となる.さらに,特徴的な環境にいる原子を漏らさず抽出することができるためニューラルネットワークの外挿問題に対しても改善が期待される.今後は,この方針でロバストなニューラルネットワークポテンシャルを作成し研究を推進する.
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