2019 Fiscal Year Annual Research Report
歪場・表面構造の自在制御による窒化物半導体の新奇物性創製
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
19H04544
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市川 修平 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50803673)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 窒化ガリウム / ステップバンチング / マクロステップ / 不純物 / 希土類 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化ガリウム(GaN)をはじめとしたIII-V族窒化物半導体のデバイス特性向上を目指し、結晶成長技術の観点から研究に取り組んでいる。
中でも本研究課題では、希土類元素の添加がGaN成長の様式を大きく変化させることに着目している。今年度は、これまでの1°オフ基板に加えて、0.8°オフおよび2°オフ微傾斜サファイア基板上にもGaNの成長を行い、その際にEu添加層を中間層として導入することで、その上部に作製した無添加GaN成長表面においてマクロステップが除去され、平坦かつ高密度な原子ステップ表面を実現可能であることを見出した。このことは、幅広いオフ角の基板に対して、希土類元素の添加が表面平坦化の観点から有用であることを示している。また、MgやSiなどの別元素の添加も併せて行うことで、マクロステップの平坦化のメカニズムがEu添加に伴う歪緩和効果に起因することが示唆された。
また上記研究と同時進行で、マクロステップを意図的利用した新奇デバイス作製にも取り組んだ。Eu添加GaNの赤色発光の高輝度化には、結晶品質を保ちつつEuを高濃度添加する手法が求められる。Euをヘビードープした試料では、極端なスパイラルモードの成長が促進されることで結晶性が著しく悪化し、高輝度LEDの実現が困難な現状にあった。そこで、本研究のマクロステップ制御技術を応用し、活性層のEu添加時には意図的にマクロステップを発生させることで強いステップフロー成長の誘起を試みた。実際に2°のオフ角を有する微傾斜(0001)サファイア基板上へEu添加GaNを成長したところ、Eu高濃度添加時においても試料全面でステップフロー成長が促進され、高い結晶性を保ちつつ高濃度Eu添加が可能であることが明らかになった。フォトルミネッセンス測定により、on-axis基板上の試料と比較して強励起下で従来条件比2.04倍の発光増強を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類添加を利用した有機金属気相成長時における表面制御技術に関して、独自性を有する新たな知見を得ており、その基礎的メカニズムについても明らかになりつつある。発光デバイス・電子デバイス応用に向けて、結晶成長技術およびデバイス化の両面において研究は極めて順調に進展している。実際に希土類添加時の結晶成長条件の最適化を通じて、室温動作可能な近赤外発光デバイスの作製にも成功するなど、当初の研究予定に対して遅れは全く生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
GaNのpn伝導制御時に添加する、Mg, Si不純物の取り込みと伝導度制御について、マクロステップの有無による諸特性の差異を評価すると共に、マクロステップ端での電流集中効果の抑制に注目して評価を行うなど、実際のデバイス特性向上に向けて研究を推進する予定である。また、微傾斜基板上の薄膜成長時において、マクロステップフリー表面を維持した状態での伝導度制御を目指すなど、デバイス作製にむけた要素技術を確立する。 また、GaNバルク基板上へのホモエピタキシャル成長などにも取り組むことで、異種基板上へのヘテロエピタキシャル成長時との比較を通じ、デバイス化だけでなく成長様式制御にかかる基礎的知見を明らかにするよう研究を推進する予定である。
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