2019 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Singularity Structures by Molecular Degrees of Freedom in Organic Radical Crystals
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
19H04550
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
細越 裕子 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50290903)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機磁性体 / 分子内自由度 / 量子スピン系 / スピンギャップ / スピン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、特異構造を持つ磁性体の合成、および特異構造が発現する新しい物性現象の観測を目的としている。有機分子が単結合周りの回転自由度を持つことに着目し、結晶中で分子配置の乱れを導入する分子設計を行った。分子配置の乱れによって分子間磁気相互作用に乱れを生じさせ、磁気格子に特異構造を出現させ、これが磁気状態に及ぼす効果を調べた。 初年度は二次元磁気格子の中でも蜂の巣格子に着目した物質合成を行い、単結晶X線構造解析によって、分子配置を決定し、原子の占有率から乱れの評価を行った。得られた原子座標を用いて分子軌道計算を行い、磁気相互作用の乱れを評価した。低温磁場中物性測定を行い、量子磁気状態を明らかにした。代表的な成果を以下に記す。 (1)有機ビラジカルを用いてS=1/2二次元蜂の巣格子を合成した。フッ素置換基の数を変化させた一連の物質合成を行い、分子内および分子間磁気相互作用の変調に成功した。分子骨格を非対称化することにより、結晶中で分子配置に乱れが生じることを明らかにし、磁場中で特異な磁気状態が発現することを観測した。 (2)有機ラジカルの亜鉛錯体を用いたS=1/2二次元蜂の巣格子において、ラジカル分子骨格の変化が、分子間磁気相互作用を変化させることを実証した。非対称ラジカル分子が生じる異性体の混晶結晶における特異構造の効果を検証するために、対称なラジカル分子骨格を用いて、磁気相互作用と量子磁気状態の相関関係を詳しく調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機ラジカルの分子設計により、戦略的にS=1/2二次元蜂の巣格子の合成に成功した。磁気相互作用の変調による磁気状態の制御に成功した。分子配置の乱れの程度と磁気状態との相関を見出し、磁気格子における特異構造が量子磁気状態に果たす役割を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
分子配置の乱れによって生じる磁気相互作用の乱れの定量的評価を行う。X線回折実験で得られる分子構造は平均構造であり、分子平面の二面角と磁気相互作用の相関関係を分子軌道計算から詳細に検討する。類似骨格を持つ一連のラジカル分子を合成し、分子構造の変化が分子間配置と磁気相互作用に及ぼす影響の詳細を明らかにし、磁気格子における特異構造の効果を考察する。種々の二次元磁気格子を合成し、量子磁気状態を考察する。
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Research Products
(6 results)