2019 Fiscal Year Annual Research Report
金属架橋カプセルの構造/機能の異方的拡張
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04566
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉沢 道人 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70372399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分子カプセル / 配位結合 / 異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「多環芳香族ナノ空間」を有する金属架橋カプセルを基盤として、その有機配位子に異種の多環芳香族パネルを導入することで、新たな『異方性ナノ空間』を精密構築することである。また、その多環芳香族骨格に囲まれた特異ナノ空間の高い分子内包能を活用した、新空間機能と新空間材料の創出を目指す。これら目的の達成により、本領域研究が目指す独創的な「空間アシンメトリー」の化学の推進に貢献する。これまでに申請者は、アントラセン環を含む湾曲型の有機配位子と金属イオンの錯形成により、多環芳香族パネルに囲まれた約1 nmの孤立空間を有する金属架橋カプセルの構築を達成した。この孤立空間では、π-スタッキング・CH-π相互作用と疎水効果が三次元的および共同的に働くことで、特異機能が発現した。これらの知見を活かして、本研究では金属架橋カプセルの異方性展開を図る。 「本年度の成果1:開放型ナノ空間による結合能増幅」本年度は、1つのアントラセン環と1つのベンゼン環を持つ新規な非対称型の二座配位子を設計および合成した。これらと金属イオンの錯形成で、開放型ナノ空間を有する異方的な金属架橋ケージを構築した。この新規な開放型ナノ空間を活用し、種々の分子内包を基盤とした空間機能の拡張を達成した。具体的には、既報の密閉型ナノ空間には入らないキナグリドンやフタロシアニンなどの巨大分子の結合能をNMRやUV-vis分析により明らかにした。 「本年度の成果2:拡張型ナノ空間による新物性発現」本年度は、金属架橋カプセルの異方的な空間拡張を達成した。4つのアントラセン環を持つW型配位子を活用して、拡張型金属架橋カプセルの構築に成功した。また、連結ナノ空間と物性を評価した。ダブルカプセルによる2つのフラーレンの定量的内包とその結晶構造解析、電気化学的相互作用の解明を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、4つのアントラセン環を4つのベンゼン環に囲まれた「開放型ナノ空間」を有する異方的な金属架橋ケージを構築した。金属架橋ケージは水中で、既報の「密閉型ナノ空間」の金属架橋カプセルには入らないキナグリドンやフタロシアニンなどの巨大な色素分子に対して、高い結合能を示した。また、ダブルカプセルによる2つのフラーレンの定量的な内包とその結晶構造解析、電気化学的相互作用の解明を達成した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、配位結合を利用した新規な金属架橋カプセルの構築とそのホスト能を開拓する。連結部位をメタフェニレン鎖からメタピリジレン鎖に変更した湾曲型の二座配位子を新規に合成する。それらと金属イオンの自己組織化により、M2L4組成の分子カプセルの構築を検討する。その構造をNMRやMS、X線結晶構造解析で決定する。この分子カプセルは、既報と同じサイズの内部空間を有するが、それと異なる分子内包能が期待できる。例えば、球状のフラーレンや蛍光性のBODIPYに対する内包能を明らかにする。金属架橋カプセルの微小な構造変化とそのホスト能を解明する。
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