2019 Fiscal Year Annual Research Report
特異な非対称配位圏を持つ「二面性ポリマー」の創成と機能開拓
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04567
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石割 文崇 大阪大学, 工学研究科, 講師 (00635807)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高分子化学 / ラダーポリマー / らせんポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子鎖を、従来のようなひも状物質ではなくテープ状物質と捉え、その両面に異なる性質を付与した二面性ポリマーは、従来のポリマーでは見られない高次構造や自己集合構造をとる可能性がある。さらに、主鎖の両面に異なる二種類の金属/イオン/分子性機能団などのゲストを配位させ、異方的に集積させることが可能な特異な非対称配位圏を持つ高分子配位子として機能し、新しいアシンメトリー機能物質開発に繋がる可能性があり、極めて興味深い。本研究では独自の設計指針に基づき、特異な非対称配位圏を持つ「二面性ポリマー」を合成し、金属/イオン/分子性機能団などのゲストを面選択的に配位させた新しい複合物質を創出し、その高次構造解明とアシンメトリー機能の開拓を目指す。 2019年度は、インデノフルオレンの上下に異なる置換基を有する二面性モノマーの光学分割から得られる、二面性ポリインデノフルオレンの合成と構造解析を行った。様々な(混合)溶媒中でUV-vis、蛍光、円二色性(CD)、円偏光発光(CPL)測定を行うことで、溶液中で二面性を発現する条件およびその機能について検討を行った。また、示唆走査熱量測定(DSC)や、粉末X線回折測定、薄膜状態におけるし斜入射X線構造解析、時間分解マイクロ波電導度測定(TRMC)などを用いて固体状態における集合構造および機能についても調査した。その結果、DMF中ではpoly-1は平面性が高く共役長の長いコンフォメーションを取ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度には、フェニル基と、オリゴエチレングリコールを側鎖に持つ二面性ポリインデノフルオレンpoly-1を合成し、その物性について詳細に検討した。その結果、poly-1はDMF中で、443 nmに極大を持つ特殊な吸収帯を発現した。これは、DMF中ではpoly-1がより平面性が高く共役長の長いコンフォメーションを取ることを示唆している。この443 nmの吸収帯は、既報のポリインデノフルオレン類においては溶液状態でも固体状態でも観測例はなく、二面性を持つポリインデノフルオレンに特有のものであると考えられる。この443 nmの新たな吸収帯は、ポリフルオレンが高規則的かつ平面的なβ-コンフォメーションと呼ばれる配座を取った際に観測される吸収と類似しており、poly-1も類似の高平面性配座を取っているものと考えられる。次に、固体状態における構造について知見を得るために、DSC測定を行ったところ、側鎖がランダムな参照ポリマー(poly-meso-1)では吸発熱ピークは観測されなかったが、poly-1では融解・結晶化に伴うピークが観測された。さらに、25 °Cにおける粉末X線回折測定を行ったところ、poly-meso-1ではハロー以外は観測されなかったが、poly-1では強い回折ピークが観測された。これらの結果は、poly-meso-1は非晶質であるのに対し、poly-1は結晶性であり、固体状態において高次構造を形成していることを示唆している。さらに、2019年度にはpoly-1とは異なる種類の側鎖を持つポリインデノフルオレン類の合成にも着手し、種々の側鎖を導入するために非常に効率的な反応条件を見出した。2019年度に目標とした二面性ポリマーの高次構造について多くの知見を獲得し、新たな二面性ポリマーの合成にも着手できたため、概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度に発見した効率的反応条件を利用し、様々な側鎖官能基を持つ二面性ポリインデノフルオレン類を合成する。それらの物性を調査しポリインデノフルオレン類の二面性発現のメカニズムについて考察したいと考えている。また、二面性モノマーとしてConcave、Convexのような凹凸を持つC2キラルなモノマーを用いた際には、得られるポリマーは巨大な内孔が二本以上の結合からなる剛直な主鎖骨格で保持された片巻らせん構造を持つ二面性ポリマーとなることが予想される。2020年度には、エタノアントラセン骨格をもつC2キラルなモノマーの合成、光学分割、および重合を行い、二面性らせんポリマーの合成を行う予定である。されに、得られた二面性ポリマーに対して、有機蛍光性分子や希土類元素などの発光性イオンを導入し、これらのゲストに誘起される高次構造について検討し、非対称配位圏を持つ高分子配位子としての機能を探索し、新しいアシンメトリー機能物質開発へと展開する。
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Research Products
(16 results)