2019 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Multi-Dimensional Chiral Assemblies Based on pi-Expanded Helical Aromatic Ligands
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04573
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣瀬 崇至 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30626867)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘリセン / ピレン / 円二色性 / 円偏光発光 / ソルバトクロミズム / エキシマー発光 / 非対称因子 / 遷移磁気双極子モーメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、金属配位部位として適度な広さのπ共役系を持つピレン色素を[5]ヘリセン骨格のらせん末端部位に導入した化合物の合成とキラル光学特性の評価を行った。 X線単結晶構造解析と量子化学計算の結果、合成した誘導体は共有結合で空間的に隣接して導入された2つのピレン部位の重なりが大きく、キラルな空間配置を持つエキシマー形成に有利な配置をとることが分かった。 TD-DFT計算から、S1→S0遷移が磁気的に許容であり、大きな遷移磁気双極子モーメント強度を持つことが示唆された(|μ_m| = 2.76 × 10^20 erg Gauss^-1)。S1→S0遷移が大きな遷移磁気双極子モーメントを持つことは、優れたキラル光学特性を実現する上で重要な特性である。 合成した化合物の発光の極大波長は、シクロヘキサン中における480 nmからメタノール中における580 nmまで溶媒極性の増加に伴って長波長側にシフトする正のソルバトクロミズムを示した。トルエン中における蛍光量子収率および蛍光寿命はそれぞれ70%, 9.7 nsであった。HPLCを用いて分取した光学異性体の円二色性(CD)および円偏光発光(CPL)測定の結果は、いずれもミラーイメージのスペクトルが観測され、トルエン溶液中におけるgCPL値は500 nmにおいて3.2 × 10^-3と良好な値が観測された。 以上のように、ピレン色素を[5]ヘリセンに由来するキラルな空間配置に固定することで、磁気的に許容なS1→S0遷移が達成され、高い蛍光量子収率および高いg値の両方を併せもつ優れたキラル発光材料を戦略的に合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の研究計画とは異なるものの、剛直なヘリセン骨格のキラリティーを利用したキラルな空間配置のピレンダイマー構造を実現することで、優れたキラル発光特性を示す化合物の有用な設計指針を確立することができた。この設計指針の鍵は、理論化学計算を駆使することで磁気的に許容なS1→S0遷移を戦略的に達成することである。 キラルな空間配位にある色素間の相互作用を基盤とすることで、優れたキラル発光特性を実現する指針を得ることができたという観点から、当初の研究計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
適度な広さのπ共役系を持つピレン色素は金属配位部位として振る舞うことが期待される。このことを利用して、π軌道を活用したアシンメトリーな配位空間の実現とそのキラル光学特性について評価を行う予定である。ピレン色素を導入する置換位置を変えることでピレンの重なり具合を最適化できることから、優れたキラル光学特性の発現に重要な色素空間配置を実験的に明らかにできると期待される。また、[5]ヘリセンに2-ピリジル基を導入ことで、当初の研究計画に沿ったキラルな金属配位構造の実現とπ軌道とd軌道が連携することで発現する特異なキラル分子特性を探究する。
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