2019 Fiscal Year Annual Research Report
非対称ヒ素錯体の高次集積化による機能創発
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04577
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
井本 裕顕 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (40744264)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 金属錯体化学 / 構造有機化学 / 有機元素化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高機能ヒ素錯体を開発し、そのヒ素上に不斉を導入した単位ユニットを開発する。そしてこれを高分子あるいは超分子化することによって高次集積化し、高次・高機能非対称配位圏を構築することを目的とする。申請者はこれまでに、従来のヒ素化合物合成法の最大の課題であった、揮発性・毒性を併せ持った前駆体を利用する点を大幅に改善し、不揮発性の無機ヒ素化合物を出発原料として鍵となる合成中間体を得ることに着目し、有機ヒ素化学を広く研究してきた。 計画1年目である令和元年度は、主に機能性を付与したヒ素ユニットの開発を行った。具体的には、含ヒ素七員環共役分子であるアルセピンが、8パイ電子系に基づく励起芳香族性を獲得し、基底状態での歪んだ構造が光励起状態では平面化する現象を発見した。Franck-Condon状態からの発光と、構造緩和によって平面化した状態からの発光の二重蛍光が観測された。また、これまでほとんど検討されてこなかった二座ヒ素配位子のライブラリー構築に成功し、各配位子のパラジウム錯体を用いた触媒反応を行うことで構造と触媒活性の相関を明らかにした。実用的な合成法に基づいて二座ヒ素配位子を系統的に調査した初めての例である。さらに、集積化による機能発現も見出した。ヒ素配位子であるアルサフルオレンにペンタフルオロフェニル基を導入することで、その白金錯体が溶媒蒸気に応答して多孔性結晶と無孔性結晶をスイッチングできることを報告している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度において、高い機能性を持つヒ素ユニットおよび集積化による機能発現を実現した。これは、当初計画に記載していた「ヒ素錯体ユニットの高次集積化による機能創発」を達成しており、非常に順調に進展していることを示すものである。 また、ヒ素配位子のライブラリー構築によって、配位子構造と錯体機能の相関を明らかにすることに成功している。これは「多彩なヒ素配位子の開発」が順調に達成されていることを示している。特筆すべきは、このヒ素配位子ライブラリーを構築する際に用いた反応は、非対称構造を合成することにも展開可能な点である。これによって次年度に非対称構造を導入したヒ素配位子を錯形成によって高機能化・高次集積化する道筋が立った。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では、高効率な燐光発光性や高度な触媒機能を発現するヒ素配位子含有金属錯体に着目し、配位子上のヒ素に不斉を導入する。非対称ヒ素配位子に重合性官能基を修飾し、高分子化によって非対称配位圏を生み出す。適切な金属を錯形成することで機能性を付与し、その高次構造に由来する特異な性質を明らかにする。さらに、多彩な配位子ライブラリーを活用し、幅広い構造―物性相関を解明する。これらの成果に基づき、ヒ素配位子設計による高次・高機能非対称配位圏の構築を実現する。
|
Research Products
(19 results)