2019 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of Chiral Transcription Systems Based on Chiral Fullerene Templates
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04584
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
荒谷 直樹 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60372562)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機化学 / 複合材料・物性 / キラル / 有機半導体 / フラーレン |
Outline of Annual Research Achievements |
フラーレンC70の二つの二重結合に置換基を付加して生成したキラルフラーレンは、ユニークな構造と電子特性のためにキラル有機電子材料として非常に魅力的である。しかし、キラルなフラーレンの光学特性、特に蛍光は電子移動によって消光するため分子デバイス特性としてこれまで全く注目されてこなかった。本研究では、名古屋大学の伊丹教授らによって開発されたフェニルボロン酸のフラーレンへの付加反応[3]を利用し、ビスホウ素化キサンテンのC70への二重付加により電子的にキラルなC70誘導体X70Aをわずか一段階で合成した。 X70Aは単結晶X線構造解析によって構造決定した。フラーレンの6員環の1,3-位にキサンテンが二付加しており、キラルな構造になった。さらに、X70Aの光学分割にも成功し、それぞれのエナンチオマーのCD測定では700 nmまで伸びる対称形のスペクトルを得た。また、X70Aは深赤色から近赤外領域でC70よりも強い蛍光を示し、それぞれのエナンチオマーで鏡像の円偏光発光 (CPL) が観測できた。CPLの強度を示す非対称要素g値は690 nmで、±7.0×10^-3であり、純粋な有機化合物かつ深赤領域としてはトップレベルの値であった。 環状ピレン4量体CP4の向かい合う2つのピレンから成る平面で囲まれた空間を利用することにより、フラーレンの分子認識を達成した。CP4 : PC61BM = 1 : 2と仮定した1H NMRを用いた滴定実験からグローバル解析により、会合定数をK1 = 765 (±15) M^-1、K2 = 191 (±4) M^-1と算出した。CP4とC60の共結晶は、ピレンに挟まれたC60に対してさらにCP4が会合することで1次元に成長しており、超分子ポリマーを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに[70]フラーレンに対する二重付加反応による分子構造のキラル化およびキロプティカル特性化を通じて、球状π電子系への置換基導入による機能化を達成した。母骨格は代表的な難溶性PAHであるが、今後の大発展への足掛かりとなる成果である。特に、フラーレンの発光体としての利用は、n型半導体としての利用がほとんどであったフラーレンに、全く見逃されてきた視点である。また、環状ピレン4量体CP4の向かい合う2つのピレンから成る平面で囲まれた空間を利用することにより、フラーレンの分子認識を達成した。さらに、環状ピレン5量体CP5とPC71BMとの会合の様子を1H NMRにより確認しており、キラル転写を達成できる目前まで条件がそろっている。
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Strategy for Future Research Activity |
室温ではラセミ化する環状ピレン多量体の特長を活かし、キラルフラーレン(+)X70Aとラセミ化環状ピレン5量体との錯形成によって、環状ピレンのキラル転化を達成し、さらに得られたキラル環状ピレン5量体が提供する不斉環境を利用して高次フラーレンの不斉認識を達成する。 環状ピレン5量体は単体では溶液中で青色発光を示すが、錯化状態では蛍光波長の長波長シフト、あるいは蛍光消光する可能性がある。また円偏向発光は微妙な差異の検出に優れているためより顕著な影響があると考えられる。このようなゲスト分子としてのキラルフラーレンのセンシングを達成する。さらにキラル環状ピレン5量体との会合定数は(+)C76と(-)C76で異なることが予想され、共結晶化によってどちらか一方を優先的に取り込めば、素のフラーレンではほとんど例のない共晶化による光学分割を達成できると考えられる。
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Research Products
(21 results)