2019 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Coordination-Asymmetric and Functional Molecules Based on a Bond between Highly Coordinated Main Group Elements
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04591
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
狩野 直和 学習院大学, 理学部, 教授 (00302810)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リン / アルミニウム / 超原子価化合物 / 化学結合 / 十員環 |
Outline of Annual Research Achievements |
配位数と元素の種類が非対称である新規な結合の創出に向けて、5配位リン原子とアルミニウム原子間の結合をもつ化合物の合成を目指し、求核性を有するアニオン性4配位リン化合物と種々のアルミニウム試薬との反応を検討した。その結果、ホウ素試薬を用いた反応の場合と異なり、リン原子とアルミニウム原子を含む新規な十員環骨格をもつアニオン性化合物が生成することを見いだした。十員環化合物の生成過程において、アルミニウム原子上の置換基とリン原子上の置換基がともに他方の原子へと移動する転位反応が進行していることが示唆された。十員環化合物の構造はX線結晶構造解析により決定した。31P{1H} NMRにおいてシグナルが七重線として観測され、分子内の二つのトリフルオロメチル基のフッ素とリンの間で結合を介さずに空間を介してスピン結合していることがわかった。生成した十員環化合物のうち、アルミニウム原子上に水素原子をもつ化合物はイミンのヒドリド還元に利用できた。合成時に使用するアルミニウム試薬の当量を変化させることで、リン-アルミニウム結合を有する新規な縮合環化合物を合成できた。X線結晶構造解析および各種NMRスペクトル測定により、その構造を明らかにした。リン-フッ素原子間距離は先に合成した十員環化合物の場合とほぼ同じであるにもかかわらず、31P NMRにおいて空間を介したスピン結合は観測されなかった。空間を介したスピン結合の発現には、環骨格の柔軟性が影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リン-アルミニウム結合を有する化合物を合成し、その性質と構造を明らかにすることができた。さらに、リンとアルミニウムを含む新規な十員環化合物も合成できた。計画は概ね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的測定と理論計算を駆使して、リン-アルミニウム間結合の特性を明らかにする。特に、DFT計算によって分子軌道、電荷分布、結合次数、結合エネルギーを解明し、化学結合としての特徴を明らかにする。アルミニウム原子上に水素をもつ場合にはヒドリド性を有していることを見出しているため、ヒドリド引き抜き反応を機軸として、アルミニウム原子の配位数および置換基が異なる誘導体を合成する。特異な構造のアルミニウム中心をもつルイス酸の開発を行い、合成反応に有用な試薬を開発する。
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