2019 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス活性キラル錯体集合体の電気化学的異方性変換
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04593
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
張 浩徹 中央大学, 理工学部, 教授 (60335198)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レドックス / キラル / ジオキソレン / 液晶 / 長鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、レドックス活性能を有するキラル錯体分子集合体を創成し、凝集相における電気化学反応を誘発することで、不斉構造と連動した異方的相状態の動的変換と機能発現を指向している。具体的には、種々のキラル錯体分子を用いた結晶相・液晶相・液体相を合理的に設計・構築し、これらに対する直接電気化学的レドックスを誘発することで、1)不斉分子の状態変換に基づいた機能、2)集合相に基づいた機能及び、3)その相乗効果に基づく機能発現(変換)を目指している。 昨年度は合目的に研究を展開し、下記の研究成果を得ている。 1.電解質複合型レドックス活性錯体の創成 キレドックス活性キラル錯体集合体に対する直接的レドックスを誘起すべく本研究では、両親媒性オリゴエチレングリコキシ(EG)鎖を共存させた分子群を設計し、各種Li電解質との複合化を行った。興味深いことに、これらの錯体群は共通して溶液中でもLiBr, LiClO4との相互作用を示唆すると共に、凝集相においても側鎖とアニオン種に依存し長距離及び短距離秩序を持つ複合体を形成した。EG2及びEGA2とLiBrとの複合体は室温、二極式電気化学セル中において酸化還元応答を示したことから、溶液電解質を用いない電気化学的状態変換の可能性を示唆した。 2.レドックス活性型トリス錯体のキラル認識能 Cr(SQ)3は、配位子上での多段階のレドックス応答を示し、一電子還元により混合原子価型配位子を含むモノアニオンを生じる。本研究では、多様なキラルカチオン認識能を示すことが知られているTRISPHATアニオン類似の[CrSQ2Cat]-がシンコニジウムキラルカチオンと複合化し、キラル集積体を与えることを確認した。以上の結果を基にレドックス活性トリス型錯体を用いた同定キラリティ制御系を今後構築していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が指向するレドックス活性キラル錯体の電気化学状態変換の実現に向けては1)レドックス活性錯体の合理的設計と合成に加え、2)キラリティーの導入と3)電気化学的レドックス変換の誘起とそれに結合したキラリティ変換プロセスの開発が必須となる。昨年度項目1については、大きく2種の立体構造を持つレドックス活性錯体の設計と合成を展開した。良好な配位子上でのレドックスを示すPtを用いた平面型錯体に対し項目3において行う電解質との複合化に向けたオリゴエチレン鎖の系統的導入に成功すると共に、種々のLi系電解質との複合化を溶液並び凝集状態で成功し、それらを分光化学的に同定できた。これらは側鎖にキラル中心を導入可能であること、また集積化により結晶、液晶、液体を形成できる可能性が高いと考える。 一方、二つ目のレドックス活性錯体群として六配位のトリス型レドックス活性錯体群の創成を進めた。特に、配位子上で多段階のレドックスを示すCr系錯体において混合原子価型配位子を含むアニオンがTRISPHATと類似したキラル認識能を持ちうることを溶液及び固体CDスペクトル等から確認できたことは有意義な成果と考える。現在これらを用いた種々のキラルカチオンとの複合化を展開しており、レドックスと強く相関したキラル認識能の発現が期待される。また、配位子上でのプロトン共役電子移動を示すFe錯体の多段階的多電子/プロトン移動特性を詳細に明らかにし論文の掲載(Chem Eur J)に至った。本モジュールを用いることでOh型錯体のラムダ・デルタ型構造変換とレドックスを結合させ目的とする動的な電気化学的状態変換を実現できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに[CrIII(Cl4SQ)3 ]とcinHClの反応により得られた(cinH)[CrIII(Cl4SQ)2(Cl4Cat)]はIVCTバンドを示す同時に、1,2-シジクロロエタン中にてcinHClとは異なるCDスペクトルを示したことから、キラルCr(III)錯体が得られたことが示唆された。また、このキラリティーはアキラルカチオンの添加、及び中性錯体への酸化により消失したことから、混合原子価型配位子を持つ錯体アニオンのキラル認識能とレドックスによるキラル認識能のON/OFF能の発現を示唆する。これらの成果を基に、今年度は得られたキラルイオン性錯体の精密構造解析を単結晶構造解析により行い、キラル認識機構を明らかにする。その際、結晶性が乏しいことが予想されるため類似キラルカチオンを用いた新規キラル系の創成を進めると共に、カチオンに依存した特性評価と電気化学的な状態変換を実現する。迅速な電気化学的状態変換を実現するにあたり凝集相における直接的な電気化学反応の進行が不可欠である。昨年度までに、本研究では、不斉レドックス活性錯体を用いた超分子結晶・液晶・液体を創成すべく、レドックス活性錯体に柔軟性と両親媒性を併せ持つDEG鎖を修飾した新規錯体群[Pt(R-Cat)(R'-bpy)]を合成し複数のLi塩との複合化並びにその電気化学応答に関する予備的知見を得ている。そこで本年度は、前述のCr錯体系へのDEG鎖修飾、及でPt系錯体へのキラリティ導入と各種Li系電解質との複合化による動的な電気化学的状態変換に伴うキラリティ制御を実現する。最後に、配位子上でPCET反応を示すことが期待される配位子群をPtbpyユニットと複合化させることで平面型PCET活性キラル錯体群の創成も展開する。
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